9月18日、日本銀行政策委員会は金融政策決定会合終了後の通常会合で、金融機関による保有株式削減努力をさらに促す新たな施策導入の検討に合意した。その後の記者会見において速水総裁は「新たな施策」として、銀行の保有する株式を直接買い取る方針を明らかにした。金融機関保有株式の価格変動リスクが金融機関経営の大きな不安定要因となっており、このリスクを軽減することによって金融システムの安定を確保するとともに、金融機関が不良債権問題の克服に着実に取り組むことのできる環境を整備するとしている。
株式買い取りに関する詳細については、今後、関係機関と協議の上で詰めるとしているが、現時点で日銀が示唆した株式買い取りの概要については、下記の通りである。
日銀による株式買い取りの概要 |
対象となる株式 |
銀行の中核的な自己資本を構成する「Tier1」を超える部分の株式で、対象となる銀行は10数行程度
※2002年3月末時点の大手銀行の保有株式総額は24兆―25兆円で、Tier1が17兆円 |
買い取る株式の要件 |
流動性に配慮して上場株式とするほか、信用リスクにも留意した要件を定める |
議決権の行使 |
行わない |
買い入れ期間 |
1〜2年程度 |
保有期間 |
10年程度 |
日銀の財務上の健全性
を担保とする手段 |
株式保有量に応じた価格変動積立金を積み立てる |
主要国の中央銀行が、民間企業の発行する株式を買い取ることは例がなく、今回の発表は、日銀当局の日本の金融システムに対する強い危機感の表れとみることができる。
一方、株式市場では、この発表を受けた直後こそ、銀行株を中心に相場が急反発する場面もみられたが、その後はさえない展開となっている。これは日銀の危機感とは対照的に、不良債権問題の解決に向けた政府の具体策が見えないことへの失望とみられている。今回の日銀の株式買い取りは、あくまで金融機関の不良債権処理を側面支援するだけであり、不良債権問題を直接解決する手段ではない。今回の決定は、不良債権問題の抜本的な解決に向けた取り組みを政府に突きつけたものといえるだろう。
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