>  今週のトピックス >  No.495
内閣府の「介護サービス価格に関する研究報告」
〜護報酬改定に向けた"爆弾"となるか〜
  介護保険がスタートして間もなく3年が経過する。2003年4月には初めての介護報酬改定が行われる。現在、厚生労働省からは社会保障審議会において固まった骨格案が提出されているが、具体的な価格は示されていない。各サービス単価を現状より上げるのか下げるのかという大まかな内容にとどまっている。
  介護サービス事業者にとって、早急に具体的な単価設定の提示を望む項目のひとつが「訪問介護サービス」だ。訪問介護については、従来3種類(身体介護、複合型、家事援助)に分類されていたサービスが、報酬改定以降は、身体介護と生活支援(従来の家事援助に近い内容)の2種類となる。
  骨格案では、身体介護の報酬額を下げ、生活支援を現在の家事援助より上げるという方向だが、どれくらいの上げ下げになるのかによって、事業者の中には死活問題となるという声も上がり始めた。
  主たる理由として、従来の身体介護と家事援助の単価の差が大きかったことが挙げられる。30分以上1時間未満のサービスを提供した場合、身体介護では4,020円、家事援助では1,530円。実に2,500円近い開きがある。問題は、家事援助の報酬額があまりに安すぎるということだ。
  介護保険スタート以降、家事援助では採算が取れないとしてサービス依頼を断ったり、半強制的に複合型にシフトさせるシーンもみられた。こうした一部の強引な手口のため、事業者全体のイメージダウンを誘う一因になったともいわれている。
  ところが、単価の高い身体介護寄りで顧客を集めていた事業者にしてみれば、もし身体介護の単価が大幅に下がることになれば、収益が極端に落ち込む危険もある。言葉は悪いが、最初の3年で「儲け主義」に走っていた事業者にしてみれば戦々恐々というわけだ。
  最終的な単価が決定するのは2003年1月だが、その前に具体的な単価が占えるのではと思われる。2002年8月に内閣府国民生活局物価政策課が発表した報告書「介護サービス価格に関する研究会」によれば、「介護サービスの採算価格を事業者に聞いた」という項目で、家事援助は2,700円、身体介護は現行単価とほぼ同額の4,030円であるという。仮にこれを元に報酬単価を決めるとして、身体介護のダウンを撤回し、訪問介護の報酬の総枠を引き上げるという大きな政策転換が行なわれることになる。
  もちろん、これは架空の話だ。だが、この報告書を内閣府が出したという点は大きい。厚生労働省にとって、ひとつの圧力となることは間違いないだろう。
  利用者にしてみれば、報酬単価が上がるということは一割の自己負担額が増えるということだ。家事援助は訪問介護のダンピング商品ではないが、現実にはそういうニュアンスで使っていたケースも少なくはないという。仮に生活支援が2,700円になったとして、現行の家事援助から1.8倍になる。事業者の苦悩以上に利用者の負担感は大きくなりそうだ。
2002.10.08
前のページにもどる
ページトップへ