>  今週のトピックス >  No.502
アメリカの株価低迷が日本市場や金融にもたらすものは何か
  企業業績や世界経済の先行きへの懸念でアメリカのダウ平均は下降線を描いている。ITバブルの時に付けた1万円台の回復どころか、移動平均線は「どこまで下がるのか」という長期低落の状況にある。9月末にはダウ工業株30種平均株価は98年8月末以来、約4年1カ月ぶりの水準になった。
  この要因には、アメリカ景気の重要な指標である個人消費統計が予想を下回る低い伸びとなり、景気減速への不安も広がったことにある。今後の予想をしてみると、ダウ平均株価は反転上昇の可能性よりは下落の途上にあり、まだまだ下げる可能性が大きい。かつてアメリカの株価が上がったのは、アメリカの好景気やそれに上乗せされた会計の帳尻合わせ(不正経理)によるところが大きく、この水準が今はげ落ちている。これは日本のバブル後の株価に酷似している。
  日本の株価が低迷しているこの時期に、アメリカの株価下落という現実は最悪の状況といえる。日本の株価はすでにバブル崩壊による影響は終わっているが、まだまだ下げ止まる気配がないのは、最近の不況と新たな不良債権の発生による金融不安にある。加えて日本経済自体がアメリカ経済に依存するところが大きいために、アメリカのダウ平均株価の下げに連動しやすいのだ。
  ニューヨーク離れが言われるが、それは淡い期待に過ぎない。政府は内閣改造で不良債権の解消を加速する姿勢を見せてはいるが、その成果はこれからのことである。なにしろ平成16年の達成が目標なのだから。
  この状況の中で金融機関や事業法人の株式の含み損は益々拡大している。おそらく、株価の上昇への反転が期待できなければ、金融への影響は大きくなるばかりである。株式の含み損の要因は、右肩上がり経済の中で法人が資産運用の主要なターゲットとしてきた長い歴史がある。今更転換するにしても、持ち株が膨大である。株価の変動リスクをなくすためには売却によるリスク回避しかないが、それを行えばさらに相場を冷やしてしまい、含み損のさらなる拡大につながる。
  日銀が月初めに発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によれば、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス14となった。前回の6月調査に比べて4ポイント上昇し、二期連続の改善となったが、株価下落や輸出の伸び悩みなどが響き、改善幅は前回6月調査時の20ポイントに比べて大きく縮小。これは株価下落や輸出の伸び悩みによるものである。この結果、指数が悪化に転じており、企業の景況感の改善は鈍った。先行きの見通しも不透明感が強まっている。いつ暗闇の出口が見つかるかは不透明であるが、今後の資産運用では「右肩上がり時代の期待」は捨て去るしかないであろう。世界的な株価低迷の時代を迎えて、企業の資産運用は土地や株式からの脱却が余儀なくされているのである。
(経済評論家  石井 勝利)
2002.10.15
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