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変額年金の銀行窓販開始
  いよいよ、10月1日より銀行窓口での変額年金販売が開始された。これは、金融ビッグバンの一環として、銀行の生保窓販解禁に伴うものである。すでに銀行は、投資信託そして損害保険も窓版解禁となっているため、この解禁により、銀行窓口のワンストップショッピング化がさらに一歩前進したといえる。
  数年前に開始した投資信託販売において、銀行のシェアは株式投信ですでに25%を突破しており、銀行員の販売力は実証済みといえる。その銀行が、現在国内生保の残高が比較的少ない変額年金販売に参入するということは、変額年金を取り巻く環境が大きく変化すると同時に、銀行窓販による販売スタイルが主流となる可能性が高いといえる。
  胡さんは、エージェントになり6年目になるが、入社以来常に同社のベストテンにランクインしている優績者。年収は18万〜20万元だが最高で25万元(円換算270〜300万円)だったこともある。都市の一人当たり平均年収が5,425元(中国統計年鑑99より)である実態からみると、いかに高額所得者であるかが分かる。
  その変額年金の特徴を、商品特性上類似点も多い投資信託と比較して次の表でまとめてみた。
比較点 変額年金 投資信託
(1) 運用商品を自ら選択できるか
ほとんどの商品で可能。なお、選択できる運用商品は、あらかじめ保険会社から提供されている商品メニューの中のものに限られる 可能
(2) 死亡保障機能
あり なし
(3) 非課税特典
死亡給付金や分配金などに非課税特典あり なし
(4) 保険料や掛け金
生命保険料控除 特典なし
(5) スイッチング
手数料で一定回数まで可能。また、元本超過部分に対してもその時点での課税はなし 一部の商品では可能。しかし、スイッチングの際は元本超過部分の20%が課税対象
(6) 受け取り方法
終身年金など保険会社が定めた複数の受け取り方法から選択可能 全部もしくは一部の解約
(7) 解約
一定期間内は解約控除あり 信託財産留保額が徴収される商品もある
(8) 保有期間中のコスト
年間3%〜5%(含む保険関係費用) 年間0.5%〜2%程度のものが一般的
(9) 加入制限
被保険者年齢の制限あり 制限なし
(10) その他
死亡給付金は受取人固有の財産 被相続人の相続財産
  変額年金は、投資信託という運用商品と、個人年金という保険商品を合体させたものである。そのため、投資信託と比較してみると、課税面でかなり優遇されているのが、分かるだろう。この課税面の優遇は、既存の銀行取扱商品にはない特性であり、その点を銀行側も顧客にアピールしてくると考えられる。
  しかし、すべての金融商品にはメリットとデメリットが存在する。例えば、変額年金加入において、顧客が注意すべき点としては、以下の点が挙げられる。
(1) 手数料が投資信託に比べてかなり高い。
(2) 運用商品の選択肢などもあらかじめ生命保険会社の選定メニューの中に限られる。
(3) 死亡給付金に対する非課税枠は、生命保険金全体で500万円×法定相続人の数であるため、すでにその枠を使っている人にはこの点はメリットにならない。
(4) すでに年間10万円以上生命保険料を支払っている場合、生命保険料控除は使えない。
(5) 分配金の非課税も分配金自体が運用成果に応じたものなので、運用状況が芳しくなく分配金が出ない場合は、メリットとはいえなくなる。さらにこの分配金非課税というメリットが最も効果を発揮するのは、運用環境が非常に良い時である。
(6) 一定期間内の中途解約は手数料が発生する。
  つまり、変額年金は万能な商品ではなく、加入に際して注意すべき点も数多く存在するということである。その点を顧客に伝えずに、課税優遇面だけを過度に強調した販売が推進されれば、一昔前の変額保険問題の繰り返しとなってしまうかもしれない。
  今後の日本においては、公的年金や退職金だけで豊かな老後を送るのは難しく、そのために個人がリスクを許容しながら資産運用を積極的に行う必要があることは間違いない。その時に、個人の資産運用商品として、変額年金が大きな役割を果たすことは先進諸外国の例を見ても確実である。つまり、変額年金は預貯金に偏った日本人の資産運用スタイルを大きく変える起爆剤となる商品なのだ。それだけに、投資信託と比較して課税優遇面だけを強調するような安易な販売スタイルではなく、加入に際する注意点、公的年金や企業年金の給付削減に対する自助努力商品として販売すべきだろう。また、老後までの長期間の積立期間におけるインフレリスクに対して、変額年金がいかに効果的であるかということ顧客へ伝え、10年後、20年後を見据えた変額年金販売が銀行窓販で推進されることを切に願いたい。
2002.10.22
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