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新証券税制の運用見直しへ
〜現場スタッフの研修体制見直しが急務〜
  10月28日から厚生労働省において、「終末期医療に関する調査等検討会」(仮称)が開催される。医療・マスコミ・教育機関等の有識者を集め、患者の尊厳という視点から終末期医療のあり方を検討していくとともに、終末期医療に対する国民や現場スタッフ(医療・看護・福祉)の意識調査を実施する。
  終末期医療については、すでに10年ほど前から「病院から在宅へ」というテーマが大きく掲げられ、訪問診療や訪問看護の現場においてさまざまな実践が施されてきた。厚生労働省も「在宅終末期医療」に関する手引書を作成し、平成4年と9年に終末期医療に関する調査・検討を重ねている。
  だが、現場レベルでの熱心な取り組みにもかかわらず、在宅で終末期を迎える人がここ10年で劇的に増えているとは思えない。平成10年までの調査では、死亡場所が医療機関という人の割合は依然として8割にのぼる。欧米諸国が5割程度という数字と比較しても、死を迎える場所の選択肢がいかに狭いかが分かる。
  また、今回実施される「終末期医療に関する調査」では、介護・福祉施設におけるターミナルケアの実態調査が新たに加わることになっている。仮に医療制度改革等によって「病院追い出し」が進んだとしても、在宅ではなく施設(特別養護老人ホームなど)という選択肢が受け皿となり、それが終末期の新たな実態を生むのだとすれば、国民の選択権として貧困というイメージはぬぐえない。
  在宅死という選択肢が伸びない背景には、診療報酬や介護報酬体系が「在宅における終末期医療とケア」をバックアップするものになっていないという点が大きい(終末期医療に関する報酬改正は、末期ガン患者を対象とした緩和ケア病棟の枠が設けられているくらい)。だが、もう一つの背景として、在宅ターミナルにかかわれる人材の育成が遅れているという点を指摘しておきたい。
  もちろん、個人の尊厳を支えるための倫理教育なども重要だが、それだけではない。在宅ターミナルにおいては、医療・看護・福祉による密接な連携を前提とした高いレベルの包括的ケアが必要になる。つまり、それぞれのスタッフがお互いの職業的立場を理解し、適切なチームプレーをとるための専門教育が必要なのだ。
  例えば、直行直帰型のホームヘルパーが、医療・看護職のカンファランスにも出席させてもらえないなどという現状がまかり通る中、チームの一員たるための職業意識と専門技能を養う環境が整っているとは到底思えない。行政が責任をもって、チームケア・カンファランスの実習をカリキュラムに盛り込むなど、思い切った研修制度の改革が望まれる。
(医療・福祉ジャーナリスト  田中 元)
2002.10.29
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