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新証券税制の運用見直しへ
  かねてから複雑で分かりにくいとの声が多く寄せられていた平成15年からの新証券税制について、このところの株価低迷も背景に、見直しの方向が打ち出されている。
  10月11日、政府税制調査会基礎問題小委員会は新証券税制見直しの骨格を発表、これに基づき11月以降、政省令等の改正により見直しが実施される見込みとなった。今回の見直しは、新証券税制に伴って導入される「特定口座制度」(※)に関する運用の改善が中心で、その概要は下表の通りとなっている。
(※)特定口座制度
(1) 特定口座内の取引について、証券会社により「年間取引報告書」が発行され、投資家は簡易な申告が可能となる。
(2) 投資家が特定口座内の取引に対し源泉徴収を希望すれば、その分の申告を不要とできる。
特定口座制度見直しの概要(主な項目)
現行 見直し案
源泉徴収ありの特定口座とした場合でも、1カ月ごとに源泉徴収、国庫納付が行われるため、1年のうちで譲渡益が発生した月と譲渡損が発生した月がある場合は、還付申告をしなければ、税金がとられすぎとなる。 取引ごとに譲渡益の洗い換えを行い、源泉徴収税額は1年分まとめて国庫納付する。 この結果、税金の「とられすぎ」が解消され、還付申告が不要となる。
平成4年末以前に取得した株式を特定口座に移管する場合、一律みなし取得価格(平成13年10月1日の終値の80%)が適用されるため、バブル期に高値で取得したケースなどは不利。 実際の取得価格で特定口座に移管することが可能。
現在保有中の株式は今年度中に特定口座の開設の申し込みをしなければ、従来口座から移管できない。 特定口座への移管期間を1年間延長し、平成15年中の特定口座開設でも移管可能とする。
  もともと特定口座制度は、上場株式等の譲渡益課税のうち、従来の源泉分離課税が廃止され、申告分離課税に一本化されることに伴って、確定申告に不慣れな投資家の便宜を図るために登場したものである。今回の見直しにより、その使い勝手が改善されたことは歓迎すべきだろう。
  しかしながら、期間限定の多様な特例がめじろ押しの新証券税制の複雑さは依然として変わらず、抜本的な見直しが求められる。
2002.10.29
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