>  今週のトピックス >  No.512
企業のグローバル化と株式による資産運用の関係
  昨今の株式市場の動きを見ると、従来のセオリーのうち、最近通用しなくなりはじめているものがある。中でも、世界の株式市場の動向がそれにあたるだろう。世界の主要株式市場の現在水準を、対最高記録値および対昨年末で比べると、下表のようになる。
  資産運用を行う場合、従来のセオリーであれば、投資地域の分散がリスク軽減の有効手段とされていた。しかし、現実は、昨年末からすべての市場において株価が下落している。ピーク時から比較すると3割から7割程度も価値が目減りしている。地域分散によるリスク軽減効果が従来ほど発揮されなかったことと思われる。
  なぜ、投資地域の分散は効果をなさなかったのであろうか。その理由のひとつは、企業のグローバル化である。日本を例に考えれば、自動車メーカー・電機メーカーなど多くの企業が国内外を問わず企業活動を行っている。外資系企業も日本国内で企業活動を行っている。以前は、日本・米国・EU諸国などにおいて、各国独自の企業がそれぞれの国の市場で企業活動を行うのが主流であり、関税制度などによって国内企業は政府から保護・優遇が行われていた。そのため、日本株式と米国株式・EU諸国の株式に分散させることにより分散投資効果を狙うというセオリーが成り立っていたわけである。
  しかし、関税撤廃・自由貿易協定などに代表されるように、企業のグローバル化が各国で促進され始めた。これにより世界の株式市場の連動性が高まっている。ITバブル崩壊などによる世界同時株安などはその最たる例といえよう。つまり、国の株式市場ごとに資産を分散させることは、従来のような効果を発揮しなくなりつつあるのである。世界の先進国の経済成熟化は、企業のグローバル化促進、さらには世界の株式市場の連鎖性を一層高めていくということを意味している。
  このような現状を踏まえると、今後の株式投資において、地域分散によるリスク軽減効果については、あまり過度な期待を寄せない方が賢明である。分散投資効果を期待するのであれば、逆相関関係にある業種の企業を地域や国にこだわらずポートフォリオを組むことのほうが効果的といえるかもしれない。
  自己責任が求められるこれからの時代、個人に頼られるFPの必要不可欠条件のひとつは、以前のセオリーにとらわれることなく、最新の資産運用アドバイス能力を身に付けていることであろう。
 
10月30日の終値
最高記録値
最高値比
昨年末比
日経平均
8756.59
38915.87
▲77.5%
▲16.9%
NYダウ
8427.41
11722.98
▲28.1%
▲15.9%
独DAX
3113.59
8064.97
▲61.4%
▲39.7%
仏CAC40
3084.22
6922.33
▲55.4%
▲33.4%
香港ハンセン指数
9560.46
18397.57
▲48.0%
▲16.1%
2002.11.05
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