> 今週のトピックス > No.513 |
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群馬県で全国初の「違法農薬」使用禁止条例が成立 |
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![]() 発がん性が指摘され、販売が認められていない農薬が全国各地の農家で使用されていることが、問題になっている。そのような中、10月11日、群馬県で違法農薬の使用を農家に禁じた「農薬適正使用条例」が、全国で初めて成立した。群馬県では独自の条例案を9月の定例県議会に提出し、この日、本会議において全会一致で可決された。
![]() <条例のポイント>は以下の通り。
![]() このような形で、群馬県は安全対策に関して生産者側に、主体的な取り組みを求めている。悪質な違反の場合には、県が農家や業者の名前を公表できるとしており、県自体でも残留農薬の検査体制を整備し実施していくという。
![]() 何故、今頃こんな条例を作る必要があるのか、と疑問に思う人が多いだろう。というのは、現行の「農薬取締法」では、違法農薬の販売については禁止しているが、使用については禁止していないからだ。つまり、使用した農家の責任が問えないのである。使用した農家の、ほとんどは違法と知っていたとみられる。また、販売業者への罰則は「1年以下の懲役、5万円以下の罰金」と、実に軽いものだ。「農薬取締法」は、全くのザル法と言える。
![]() 違法農薬の使用は、ずっと以前からあったが、最近になって「食の安全」への関心の高まりの中で問題視されるようになり、ようやく公に知られることとなった。中国産野菜ではなく、国産だから安全とは、全く言えない状況なのだ。
![]() 農林水産省は、無登録農薬が全国で出回った問題に関して、10月23日に、中間の調査結果を発表した。それによると、この3年間で、計10種類の違法農薬が391トンも売られており、流通は44都道府県にわたり、販売店は全国で254か所。このうち5分の1を占める50か所が農協だった。同省は来月から順次、営業停止などの処分をする方針だ。そして、購入・使用した農家は3,014戸に及び、違法性については、「知らなかった」どころか、「(無登録農薬を)売ってくれないなら肥料を買わない」と農協に迫る農家もあったという。
![]() 販売の量が最も多かった違法農薬は、土壌殺菌剤PCNBで353トン。これに毒性のあるダイオキシン類が含まれており、2000年3月に農薬としての登録が失効している。次に多かったのは殺菌剤ダイホルタンで29トン。発ガン性が指摘されており、1989年12月に登録失効。そして、殺虫剤プリクトランが6.3トン。催奇形性が指摘されており、1987年12月に登録失効となっている。その他、リンゴやナシの落下防止に用いる植物成長調整剤のα−ナフタリン酢酸(急性・亜急性毒性があり、1976年9月登録失効)や過去に全く登録されたことがない殺虫剤アバメクチンなどもあった。
これらの農薬使用で、出荷停止や廃棄処分となった果樹と野菜は32県で計5,600トン。損害額は実に約13億円で、最終的にはさらに増える見込みだ。損害が最も多かったのはナシ、次いでリンゴ、西洋ナシのラ・フランス。そして、ヤマトイモ、メロン、スイカ、白菜、イチゴなども廃棄されている。
群馬県が、全国に先駆けて今回の条例制定に踏み切った理由は、「消費者の信頼を回復するためには、農家の責任を明確にするなど、分かりやすい対応が必要であるから」、としている。では、これによって、「食の安全」が本当に確保できるのだろうか?また、消費者の生産者への不信感が払拭できるのだろうか?特に、この条例には罰則規定がないだけに疑問が残る。しかし、県が違反者の名前を公表していけば、それなりの効果はあるだろう。そして、使用した農家の畑の残留農薬の検査も厳しく行っていけば、安全への第一歩とはなるだろう。
国としての取り組みは遅いが、農水省は今国会で農薬取締法の改正案を提出し、来年3月までの施行を目指す方針だ。改正案の主な柱は以下の通り
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![]() 一見、厳しくなっているように見えるが、検査体制が伴わなければ画餅だ。また「100万円以下の罰金」という表現では曖昧である。「一律に100万円」とするか、「最低50万円以上100万円以下」とでもしないと抑制効果が薄い。悪質な違反者には罰金だけではなく、農家の資格を取り消すことも検討していいのではないか。違反者には厳しくし、有機農業など安全性の高い事業を行うもの農家にはインセンティブを与えるようなシステムにし、農業従事者みなに、「食べ物を作っている」のだという自覚を持たせる政策が必要だろう。
![]() (フリライター 志田 和隆)
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2002.11.05 |
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