>  今週のトピックス >  No.516
雇用保険料が3年連続で引き上げの見通し
●雇用保険料が1.4%から1.6%へ再び引き上げられる見込み
  11月5日、厚生労働省が発表した雇用保険制度改革案によると、来年6月に雇用保険料率が1.4%から1.6%に引き上げられる見通しとなった。もし実現すれば、国民全体で約3,000億円の負担増となる。月収30万円のサラリーマンでは、月々の負担額が2,100円から2,400円に増える。雇用保険料については、昨年に引き続き今年10月に0.2%の引き上げがあったばかりで、3年連続の引き上げということになれば労使から不満の声が高まるとともに、景気への悪影響も懸念される。
●雇用保険の引き上げはこれで最後か?
  相次ぐ雇用保険料の引き上げは、失業者の急増によって雇用保険財政が悪化し、破たんの可能性が高まったためだ。厚生労働省の試算では、今回の引き上げにより雇用保険財政が改善し、2007年度末には健全化されると見込まれている。
  だが、本当にこれで問題は解決するのだろうか。政府が想定している失業率は6〜7%というが、このまま小泉首相の構造改革が進めば必然的に大量の失業者が出現し、想定した失業率を上回ることも考えられる。現に、15〜24歳の若年層と55〜64歳の中高年層については今の段階で失業率が7%を超えている。もし、今後も「失業率の悪化→雇用保険料率の引き上げ」というパターンが繰り返されれば、負担増を嫌う企業がますます従業員の雇用を控えるようになり、失業者が増加するなど、雇用不安がさらに高まることも予想される。
●若年層に酷な失業手当の引き下げ
  厚生労働省の案に対して、経済産業省は企業経営者の負担をアップさせないで雇用保険財政を改善させる方法を検討中だ。具体的には、雇用保険料は引き上げずに、年齢層によって失業手当の給付水準と給付日数を調整して対応する。例えば自発的失業者について、20歳代は給付額を9割にするかわりに給付日数を30日に短縮し、反対に50歳代は給付額を5割にする代わりに給付日数を180日にする。給付額の上限額(日額)についても、45〜59歳は8,040円、30歳未満は6,580円と年齢に応じて設定する。もしこれが実現すれば、ただでさえ失業率が高い若年層にとって酷な事態になりそうだ。失業手当の支給がたった30日間では、再就職活動さえままならないだろう。
●セーフティネットに対する信頼が揺らぐ可能性も
  相次ぐ雇用保険の見直しは、年金に対する政府の対応を思い起こさせる。政府の予想以上に少子高齢化が進んだため、その場しのぎの対応を繰り返した結果、国民は将来の年金受給に強い不信感を抱くようになった。いざという時のセーフティネットがあてにできなければ将来に対する不安は増すばかりで、消費が上向くわけがない。いつまでも不況と失業の悪循環が繰り返されることになる。この流れを断ち切るために、早く政府が根本的な対応策を見つけることを、切に願う。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.11.12
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