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平成14年度経済財政白書「改革なくして成長なしU」
  竹中経済財政・金融担当相は、11月5日の閣議に平成14年度年次経済財政報告(「経済財政白書」)を提出した。 「経済財政白書」は、政府のマクロ経済分析として昭和22年から続いてきた「経済白書」(年次経済報告)を、昨年度より財政も加えた総合分析としてリニューアルしたものである。
  平成14年度「経済財政白書」は、3章からなっており、第1章では「景気回復力の展望」と題して、マクロ経済についての現状分析や景気の先行きなどについて分析している。これによると、景気は2002年1-3月期に、外需の伸びを主因に底入れしたもののデフレによる下押しで回復力は脆弱であるとし、景気の先行きについても緩やかに回復するとしながらも、米経済の停滞などによる景気腰折れリスクを指摘している。
  その上で、「力強い景気回復のためには、構造改革による経済活性化が必要」と結んでいる。
  第2章では「活力回復のための税制改革に向けて」と題して、個人および法人の所得課税について分析を行っている。個人所得課税では、給与所得者の8割に最低税率(10%)が適用され、5人に1人が所得税を負担していないなど税負担の歪みを挙げ、一方、法人所得課税については、諸外国と比較した法人の税負担率の高さなどを指摘している。
  第3章では「日本経済を活性化するための課題」と題して、わが国の経済構造の現状分析とその展望を行っている。まず、中国などからの輸入増加を背景とする「産業空洞化」は必ずしも国内産業にマイナスではないとしつつも、アジアの発展により「モノ」の貿易で日本が優位に立てる分野は限定的となり、サービス産業の生産性向上で競争力を高めることが必要としている。また、90年代には労働生産性の上昇率が大幅に鈍化しており、企業経営、労働・資本など生産要素の配分、研究開発における効率化の必要性も指摘している。最後に、構造改革は供給側を意識した政策ではあるが、同時に需要を喚起するものであるとして、構造改革による経済成長を唱えている。
  「経済財政白書」は、旧経済白書を含め、毎年サブタイトルが掲げられているが、今年度は小泉内閣の経済政策のスローガンである「改革なくして成長なし」が、昨年度に続きサブタイトルとして掲げられた。この異例の2年連続同タイトルは、政策の一貫性を誇示したものといえるが、その意気込みとは裏腹に、わが国経済の再生へ向けた具体策を欠くとの批判も出ている。いずれにせよ、求められているのはもはや議論ではなく「実行」といえよう。
<参考>過去の経済(財政)白書のサブタイトル
平成13年度 改革なくして成長なし
平成12年度 新しい世の中が始まる
平成11年度 経済再生への挑戦
平成10年度 創造的発展への基礎固め
平成9年度 改革へ本格起動する日本経済
平成8年度 改革が展望を切り開く
平成7年度 日本経済のダイナミズムの復活をめざして
平成6年度 厳しい調整を超えて新たなフロンティアへ
2002.11.12
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