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正田邸の物納にみる相続税の物納とは?
  美智子皇后のご実家正田邸が物納されたことについて、取り壊しや移転など物議を醸し出している。物納申請の件数と金額の状況は次のとおりである。
相続税の物納件数と金額
相続税の物納件数と金額
  平成10年度〜平成13年度までの4年間で、相続税の物納申請件数は81.3%、金額は70.8%と、共に減少が著しい。理由として土地の路線価の下落により相続税額が下がり、現金納付の割合が増えたことや路線価の下落により土地の評価額も下がっているため以前よりも物納申請としてのメリットが減ってきたことなどが考えられる。
  相続税の納付は、金銭による納付を原則としているが、財産課税という性格や税額が高額(最高税率70%)になることなどの理由から、金銭による納付が延納を含めても困難な場合には、相続財産による物納が認められているというのは一般的に知られている。
  相続税の申告期限までに分割が決まらず(いわゆる争族)、未分割のままで申告をしなければならなくなった場合でも税務署は納税を待ってくれない。
  なんらかの形で納税をしなければならないだけでなく、納税しない場合は法定期限の翌日から滞納とみなされてしまうことになる。
  しかも未分割の状態では「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価の特例」が使えないので、その場合の納税額は通常の申告よりはるかに多額になってしまう。
  そこで物納申請をすると「物納申請不動産に関する書類の補完等の通知書」が半年ほどすると税務署より送られてくる。これは「未分割財産は物納には不適格なので、○月○日までにそれを補完するように」という通知であり、分割を決め遺産分割協議書に基づく相続登記を完了させることが補完事項になる。
  期日までに補完できない場合は、税務署より却下通知が送られて物納申請を却下された場合は、延納への切り替えもできなくなる。
  それでも分割が決まらず納税できない場合は滞納処分となり、申告期限から延滞税がつき、督促や催告をされ、最後には国税当局による相続税保全のための財産の差し押さえとなる。
  この際に差し押さえられる財産は、相続財産と個人所有の財産の中で担保価値があり換金されやすいものが選ばれるので、アパートなどの賃貸物件の場合は、その家賃収入にまで差し押さえが及ぶ場合がある。
  差し押さえは特殊な処分なため、国税当局の対応は納税者によって異なるが、その手続きは容赦なく実行される。
  このように相続が発生し、申告期限までに分割が決まらないと、相続人は納税面で多大な不利益を被るだけでなく、精神的な苦痛は計り知れないものがある。
  いずれにしても日頃より家族や親族間で争族にならないためにも相続対策をしておくことが大切といえる。
2002.11.19
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