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明暗を分ける日本株市場と海外債券市場
  資産運用において、主な投資対象は(1)日本株式 (2)日本債券 (3)海外株式 (4)海外債券の4つに区分されるのが一般的である。この4つの投資対象において、最近の傾向は、日本株式が19年ぶり安値を記録するなど低迷する一方で、海外債券の運用パフォーマンスは絶好調といえる。そのため、特に高格付け・高利回りの海外債券市場へ個人マネーや年金マネーの運用資金が集中し始めている。
  例えば、日銀の資金循環統計によると、個人マネーにおいては個人外貨建て金融資産が2002年6月末で約13兆円を突破し、過去最高を記録した。特にここ1年間で残高が4兆円も急増している。中でも、海外債券などの外国証券が前年比58.9%増加の9兆4,000億円と、外貨預金(約4兆3,000億円)の15.9%増を大きく上回る増加を見せている。 そこで、今回は海外債券を取り巻く環境について、過去や現在のデータを見ながら検証してみることにする。
  まず、4つの投資対象の運用状況がどのようになっているか2002年9月末を基準に過去3年間で追ったのが以下の表である。
投資対象 過去1カ月 過去6カ月 過去1年 過去3年
日本株式 2.19% ▲13.12% ▲10.00% ▲38.87%
日本債券 0.04% 2.00% 2.38% 8.41%
海外株式 6.41% ▲32.63% ▲15.64% ▲27.36%
海外債券 5.24% 7.33% 15.68% 38.09%
前回のトピックスでも触れたが、上記表からも、世界的に株式市場の低迷、逆に債券市場特に海外債券市場の好調が一目瞭然であろう。
また、欧米国債の9月末の応募者利回りをまとめたのが次の一覧表である。
  5年国債 10年国債
3.60% 4.27%
イギリス 4.12% 4.37%
オランダ 3.63% 4.38%
フランス 3.65% 4.39%
スペイン 3.65% 4.46%
イタリア 3.71% 4.58%
アメリカ 2.65% 3.72%
0.34% 1.19%
  このように、日本の国債に比べてかなり高い利回りも、海外債券投資への動きが加速度を増す要因の一つとなっている。また、通常は信用力が高い債券ほど利回りは低く、逆に信用力が低い債券ほど利回りが高いというのが一般的である。しかし、為替変動というものを抜きにして考えれば、上記に挙げた各国の国債と日本国債では、日本国債の方が、格付け、利回り、共に上記各国よりも低いというある意味で異常な現象が起きている。
  以上の2つの一覧表、そして世界経済の現状を考えれば、海外債券へ投資する投資信託が純資産残高を増加し続けている一方で、日本株投資をする投資信託が逆に資金流出が続いており、日本株式と海外債券で明暗がはっきり分かれている現状は当然の結果といえるのではないだろうか。
2002.11.19
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