>  今週のトピックス >  No.521
若い女性の間に広がる水虫
  水虫というと、オジサンの病気と思われてきたが、最近、若い女性の間でも増加し、全国の皮膚科に通う水虫患者のうち半数近くが女性という。病気のイメージが悪いため、密かに悩んでいる女性は多いようで、薬局の中には、男性の目を気にする女性への配慮から、女性向けコーナーを設けて水虫薬を置くところも少なくないそうだ。治療薬を購入する女性は2年前に比べて2倍に増加。特に、20代、30代のOLが多いという。昨年3月には、女性向けに特化した水虫薬が発売されるようになり、現在4種類ほど市場に出回っている。
  水虫とは、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が原因で、皮膚の一番外側の角質層にあるケラチンという蛋白質を溶かして栄養源とし、皮膚に寄生していく。皮膚の奥深くに侵入すると炎症が起き、痒み、ただれ、腫れなどの症状が現れる。ひどくなると痛みで歩行困難になることさえある。この菌は高温多湿を好み、温度15度、湿度70%以上になると増殖し、温度や湿度の変化にも強い生命力があり、冬場のような低温・乾燥状態の中でも「冬眠状態」で生き続け、春以降の高温多湿の季節になると再び増殖を始める。また、患部から離れても、はがれ落ちた皮膚の破片や毛髪・爪などを餌として20日〜300日生き続け、長い間感染力を保っている。このため、一度水虫にかかるとなかなか完治しない。現在、全国の感染者は推定で約2500万人(日本人の約20%)。かかりやすさに性別は関係なく、女性だからかかりにくいというわけではない。
  ではなぜ、これまではサラリーマン男性に多かった水虫が若い女性の間にも広がったのだろうか。その大きな原因としては、まず仕事や生活面の環境の変化が挙げられる。仕事が男性並になって、室内で通気性のよい上履きに履き替えることなく、営業などで長時間靴を履いたままでいることが多くなったためらしい。足は1日にコップ1杯の汗をかくというが、足の周りの湿度が高ければ高いほど感染は速まり、1日8時間以上靴を履く人は、そうでない人の2倍感染しやすいという。
  また、「foot care」で足を傷つけ、そこから菌が侵入して感染するケースも多いようだ。最近のサンダル(ミュール)など素足を見せるファッションの流行から足をキレイにしようとナイフや軽石で固くなった皮膚を削る女性が少なくないが、その傷口に菌が付着すると、半日ほどで感染することもあるという。素足でいることは、汗で蒸れる靴の中より、かかりにくい反面、傷口から感染しやすいというリスクもあることに注意が必要だ。
  感染経路で一番多いのは自宅で、裸足で触れる場所だ。中でも、特に白癬菌が多いのは浴室の足拭きマットで、カーペットやスリッパなどがそれに続く。乾燥したフローリングの床や畳から菌が検出されることも多いという。
  外出先で菌が付着しやすい場所としては、不特定多数の人が集まる銭湯や温泉などの共同浴場。次いで多いのがプールや靴を脱いで食事をする居酒屋やレストランなどの外食店となっている。
  予防策としては、以下の事柄が挙げられる。
  1. バス・マットの洗濯、床掃除をこまめに行う。
  2. 足の指の間や爪の周りを毎日念入りに洗い乾燥させておく(傷がない限り皮膚に付着してから感染するまでには通常2〜3日はかかるので、その間に足を清潔な状態にすれば防げる)。
  3. 通気性の良い履き物や、吸湿性のよい靴下(五本指ソックスなど)を選ぶ。職場ではサンダルに履き替えたり、靴下を取り替えたりなどして、湿気や汚れを防ぐ。
  4. 毎日同じ靴を履くことはさけ、2〜3足をローテーションで履き替える(脱いだ靴は乾燥剤を入れたり、陰干ししてよく湿気をとる。靴の内側を消毒して雑菌をとると、より効果的)。
  5. 家族の中に水虫の人がいる場合は、バス・マットやスリッパの共用は避ける。
  もし感染したと思われる場合は、菌の拡散を防ぐためにも速やかに医師の診断を受け、根気よく治療する。通常、水虫には塗り薬を使うが、痒みが止んでも最低2カ月以上は連続して塗る必要がある。皮膚の新陳代謝で角質層は約2カ月で入れ代わるからだ。痒みがなくなったからと薬を止めると、生き残った菌が再び増殖することが多い。治りにくい重度の場合は、飲み薬を使う。
  これからはブーツの季節。春夏ほどではないが、水虫は冬でも感染するので、十分な注意が必要だろう。
(フリーライター  志田 和隆)
2002.11.19
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