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役員退職慰労金・弔慰金の損金算入時期について裁決が出る
  111月に入り国税不服審判所の裁決事例集62(平成8.7.1〜平成13.6.30)が公開された。この事例集には、役員の退職や死亡に伴う慰労金や弔慰金の支給における損金算入時期について、否認された事例が掲載されている。
  裁決事例集62-258頁の事例をみてみよう。平成11年に医療法人の前院長が、死亡により理事を退任した際に、当該医療法人の役員規程の「退職金」条項では以下のように定められていた(1)役員(理事)退職慰労金は、「社員総会」の承認を得て支給すること、(2)退職慰労金の金額は「理事会」の協議において決定の上、「社員総会」において承認された額、(3)役員退職慰労金の支給期日および、支給方法等は「社員総会」の決議に従い「理事会」が決定する。
  ところが当該事業年度に、退職慰労金等に関する社員総会または理事会の決議がなされた事実がないにもかかわらず、平成12年3月31日付で、役員退職慰労金の全額が損金経理により未払金に計上された。
  そしてその事業年度終了後の平成12年5月8日に、当該医療法人の臨時社員総会において、「金額の確定」「支払期日」、ならびに「支払方法」が承認可決され、医療法人、前院長の妻に退職慰労金等を全額支払った。しかし、当該事業年度、未払金での損金算入は税務署が認めなかったのである。
  否認の根拠となったのは、法人税法第22条第3項第2号の「原則、債務の確定した費用のみ、損金算入する」旨の規定である。退職慰労金の支給に関して決議がなされていない(確定しない)以上、役員の退任を原因として退職慰労金等の額が自動的に決められたと解することはできないとしたのである。
  つまり、医療法人における意思決定機関であるという正当なプロセス「社員総会」の決定を経ずに未払金として損金算入した点が、裁決を下す最大のポイントとなっている。
  法人への生命保険提案においては、退職慰労金・弔慰金規程の有無を確認し規程がない場合は作成を勧めた上で契約するという形が浸透しているが、さらに一歩踏み込んで規程に則って「理事会」「社員総会」(株式会社の場合は「取締役会」「株主総会」)にて承認可決を行い、議事録を残しておくことが支給において重要であることをアドバイスすることが大切である。
2002.11.26
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