>  今週のトピックス >  No.533
4年目に入った消費者物価の下落
  総務省が発表した9月の全国消費者物価指数(平成12年=100、生鮮食品を除く総合)は、98.3と前年同月比−0.9%となった。これにより、平成11年9月以来3年1カ月連続の落ち込みを記録し、デフレの長期化を裏付けるものとなった。
  この内訳をみると、ほとんどすべての項目にわたってマイナスとなっているが、とりわけ下落が著しいのは、家電製品などの耐久財を含む「家具・家事用品」や、「被服・履物」などの項目である。すなわち、家計にとって不要不急のものほど、物価が大きく下落していることがうかがえる。
  物価指数には、小売価格をベースとした家計にとっての物価指数である消費者物価のほかに、企業間の取引価格である卸売物価がある。卸売物価は景気変動に敏感反応する傾向があり、過去の不況時にもある程度継続的にマイナスが続く場面もみられたが、消費者物価指数が継続的にマイナスになる現象は、戦後経験したことがない異例の事態といえる。
  消費者物価が、卸売物価と異なり、不況時にもマイナスになりにくかった一つの要因は、卸売物価がモノの価格だけを対象としているのに対し、消費者物価は人件費の占める割合が高いサービス価格も対象としていることだとされていた。
  一方、近年の消費者物価のマイナスは、かつて下がりにくいとされたサービス価格すらマイナスとなっていることが、その大きな要因である。この背後には人件費の低下、すなわち家計にとっての賃金の低下が潜んでいるといえよう。
  消費者物価の下落傾向が始まった当初は、ユニクロやマクドナルドなど一部産業にみられる低価格競争が「価格破壊」として注目を集め、むしろ物価の下落は家計の購買力を上昇させるものとして好意的に受け止める雰囲気が強かった。
  しかし、現状の物価動向は「物価の下落→賃金の下落→さらなる物価下落」という悪循環に陥るデフレスパイラルの様相を呈しているとみられ、深刻な問題として受け止めるべき段階にきている。
2002.12.10
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