>  今週のトピックス >  No.534
手抜き工事とマンションの資産価値に対する考え方について
  マンションの手抜き工事に関して、前々から問題になっているが、最近、住宅・都市整備公団(現・都市基盤整備公団)の大規模な手抜き工事が発覚、そのずさんな体質が問題化して、改めてマンションの「区分所有」の資産価値に対して目が向けられた。
  場所は東京・八王子市の多摩ニュータウン。ここで、バブルのころに分譲された物件に雨漏りが起きたため、調査したところ、外壁にも大きな穴があいていたり、屋上からの漏水が発覚したりした。その時は丁度、長期修繕の時期でもあったので、大々的な調査の結果、許し難い手抜き工事が明らかになった次第。
  結果的には住民に移転してもらい、3棟を建て替え、1棟は屋根の取り替え、4棟が大修繕となった。ただし、これは途中の段階であり、この地域での問題の広がりはもちろん、同時期に建てられた全国の公団の分譲住宅に手抜きの問題が波及する可能性も出てきたのである。ではなぜ、このようなことになったのか。今のところ考えられるのは、次のような点である。
  1. 工事の監査の不備
  2. 発注建設会社の技術力の低さ
  3. 工事費に対する建設費のバランスの悪さからきた手抜き
  4. バブル期特有の人手不足から来た粗悪工事
  今回の多摩ニュータウンの一件は、国民の間に「公団が」という大きな驚きをもたらした。民間のマンションは分譲会社・施工会社ともにさまざまなので、手抜きがあるのではないかという不安は常にあったし、現実に多くの手抜き工事のマンションが発覚し、各地で裁判沙汰にもなっている。
  公団の建物では、従来あまりそのような問題はなかったが、今回のことから一挙に公団不信が高まった。こうなると「区分所有」という箱物所有の資産が、構造体である外壁の欠陥で脅かされることが多々あるのではないかとの疑念が増幅されてくるのである。住宅には住宅ローンがあり、団体信用生命保険も掛けられ、自分の資産であるとともに、万が一の時の生命保険代わりにもなっている。ところが、建物そのものに問題が出てくると、「地震以外でもマンションの倒壊がある」との不安が起きてくるわけである。
  いまや、マンションは都市生活者の当たり前の住空間であり、この傾向は今後益々高まってくるであろう。さらに、高層マンションの林立で手抜きは一層重大なことになる。従って、今後このような問題が起きないように、各方面への警鐘を鳴らしたいところである。
(経済評論家  石井 勝利)
2002.12.10
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