>  今週のトピックス >  No.537
相続税・贈与税の一体化の改正案
〜高齢層から次の世代へ財産を移転し消費を活性化〜
  このほど発表された2003年度税制改正大綱では、政府税調において示唆されていた相続税・贈与税の一体化案(平成14年11月19日答申)が盛りこまれている。
  今回の相続税・贈与税の一体化案は、65歳以上の親から20歳以上の子ども(推定相続人)に贈与する場合、現行の相続税課税時の非課税分(5,000万円+法定相続人の数×1,000万円)を前倒しして、選択制で2,500万円まで生前贈与を非課税で認めようとしている(財産の種類、金額、回数に制限なし)。この制度を選択した場合に、贈与財産が2,500万円を超える部分は一律20%の贈与税が課せられる。ただし、実際の相続時において、前倒しで贈与された財産も相続財産(贈与時の時価で評価)とされ最終的に調整される。さらに、居住用住宅の取得などの資金については、その枠を3,500万円まで拡大しようとしている(2005年末まで)。この場合、贈与する親の年齢制限はなく、65歳未満の親からも贈与を受けられる。
  また、国際比較において、高くて複雑といわれている相続税の税率も軽減・簡素化の方向で見直そうとしている。最高税率については、日本は現行70%で先進国の50%以下と比較するとかなり高い率になっている。そのため、これを50%にし、税率の組数においては、現在の9を6段階(50%、40%、30%、20%、15%、10%)に減らそうとしている(下表資料参照)。
  これらの案は、生前贈与を促進することにより、財産を持っているとみなされている高齢層(注1)から次の世代に財産を移転することを狙いとしている。この財産移転のプロセスの中で、不動産取得(住宅)をはじめとする消費の拡大を図り、景気に刺激を与えたいということのようだ。
  なお、今後さらにさまざまな意見・要望などにより、紆余曲折を経て法改正に至るものと思われる。相続税に関しては生命保険と密接な関連があり、今後の動向を注視し、法改正後の対応を研究しておくことが重要となる。
(注1)
<高齢層>
平成13年の貯蓄保有額のうち約50%を60歳以上の世帯主が保有している。50歳以上だと約80%保有となっている。(金融広報中央委員会平成14年度版)
【相続税の国際比較】
区分 日本 アメリカ イギリス ドイツ フランス
課税方式 遺産取得課税方式 遺産課税方式 遺産課税方式 遺産取得課税方式 遺産取得課税方式
課税客体 相続または遺贈により
取得した財産
死亡時に
その所有に属していた
すべての財産
死亡時に
その所有に属していた
すべての財産
相続または遺贈により
取得した財産
相続または遺贈により
取得した財産
納税義務者 相続人または受遺者 遺言執行者
または遺産管理人
遺言執行者
または遺産管理人
相続人または受遺者 相続人または受遺者
課税最低限
(配偶者と子3人)
9,000万円 2億6,000万円 9,050万円 1億4,145万円 3,174万円
最低税率 10% 18% 40% 712・17% 5
最高税率 70% 50% 40% 30・40・50% 40%
税率の組数 9 16 1 7 7
<政府税制調査会資料より>
2002.12.17
前のページにもどる
ページトップへ