> 今週のトピックス > No.538 |
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低迷する「機械受注統計」数字はミクロの目で見る必要も |
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![]() 日本経済の温度差を示す「設備投資」の代表的な指標である「機械受注統計」が相変わらず低調である。内閣府がこのほど発表した10月の機械受注統計によれば、設備投資の先行指標である船舶・電力を除く民需は前月比4.1%減と深刻な状況となった。
この内訳を見てみよう。
以上の内容から考えると、減少の要因が金融再生のためのリストラ、店舗などの経営統合にあり、今後ともこの傾向は続いて機械受注低迷のファクターになり続けるものと考えられる。さらに、半導体などのIT関連の投資は市況の弱含みと競争の激化で関連企業の業績が落ち込み、加えて韓国などの攻勢により同じ土俵では戦えない状況で、安易な設備投資には踏み切れない事情がある。このため、半導体製造の機械受注は当面は今後も活気が見られそうにない。
ただ、自動車関連は、元々品質の良さで競争力があるので売れ行きが伸び、その反映としての機械受注は今後も増え続けていくと思われる。
このように見ると、好調な自動車と低迷の金融・半導体が対峙(たいじ)する形になっており、カギはIT関連の新たな需要がどこで増えてくるかにあるのではないか。
一部には新世代の携帯やパソコン・ゲーム機器での需要の好転が見られるので、ここからの突破口がどうなるかが期待されるところである。
ただ、機械受注の動向は日本経済の温度であり、画期的な希望のもてる景気対策がでる可能性がなければ経営者マインドは暖まらず、慎重な経営姿勢が継続するだろう。たとえ、積極的な設備投資意欲が一部にはあっても、金融機関の貸し渋りの現状では、この状況は相変わらず続いていくのではないだろうか。
金融のハードランディングに意欲を燃やす政府の担当大臣は民間の景気対策にはあまり気が向いていないようなので、当面の受注の急激な好転は期待できないであろう。ただ、全面曇りの状況ではなく、まだら模様の面があるので、この統計はマクロの目ではなく、ミクロの目で見ていくことも大切である。
![]() (経済評論家 石井 勝利)
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2002.12.17 |
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