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新市場「大証ヘラクレス」が活動開始
〜2案併記の背景にあるもの〜
●大証ヘラクレスに第1号銘柄が上場
  2002年8月に米ナスダックが撤退を表明したナスダック・ジャパンが、12月16日に「ヘラクレス」と名称を変更して新しいスタートを切った。翌17日には、第1号銘柄として定食屋チェーンのフジオフードシステムが上場し、公募価格を4%上回る28万円の初値をつけた。株価不振の現状ではまあまあの出だしといえそうだが、大証ヘラクレス全体の初日の売買高は46%減と、ご祝儀買いにはほど遠い状況となったようだ。米ナスダックというブランド力を失ったいま、ヘラクレスの今後が注目される。
●大証の新市場部とヘラクレスが統合される見込み
  現在、ヘラクレス市場に上場している企業は新規上場分も含めて103社。米ナスダックが撤退を表明して以来、多くの企業がジャスダック市場や東証マザーズなどほかのベンチャー市場に流出することが予想されたが、現在のところ5社が廃止を申し出ただけだ。同じく5社が新規上場を申し出ているため、総数は変わらない。ナスダック撤退を受けて危機感を募らせた大証が、東京拠点を充実させて首都圏の企業の上場企業誘致を強化したり、上場コストを低くするなどの対策をとった結果とみられる。大阪証券取引所では来年、新市場部とヘラクレスを統合する計画を立てており、ヘラクレス市場にかける意気込みが伝わってくる。
●新興市場の規模は縮小傾向にある
  だが、ベンチャー向けの新興市場の現状は決して明るいとはいえない。2002年にジャスダック、東証マザーズ、ナスダック・ジャパンの3市場に新規上場した企業数は前年比3割減で、一社当たりの平均調達額は前年比6割減にまで落ち込んだ。マザーズやナスダックが登場した当時は、資金集めを重視して公募価格を高く設定することが多かったが、現在では相場が低迷し投資家の意欲が落ちていることから、公募価格を低く抑える傾向があるようだ。資金集めよりも、まず上場して投資家の信頼を得ることを目的とする企業が増えているとみられる。ITバブルでは小さなベンチャー企業が不相応な資金調達をして使い道に困るという現象がみられたが、身の丈にあった資金調達が行われるようになったという点では、投資家にとっても歓迎すべきことといえるかもしれない。
●生き残りにはブランド力の向上などの対策が不可欠
  しかし、2003年度も株式相場の冷え込みが続くとすれば、せっかく上場を果たした企業が市場から退場しなければならない例が増えることになりかねない。そうなれば、新興市場の衰退も避けられない事態となる。この2年でベンチャー向けの新市場は大きな変貌を遂げたが、これから2年後には勢力図が大きく変わっている可能性もある。ヘラクレスをはじめとする新興市場が今後生き残っていくためには、ブランド力のアップや株式の流動性の向上など市場の魅力を高める努力が不可欠だろう。
(マネーライター  本田 桂子)
2002.12.24
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