>  今週のトピックス >  No.542
東京市場の株価、下落が止まらないのはなぜか?
  東京株式市場でだらだらとした株価の下げ基調が続いている。9日間の連続下落から一日反転した平均株価は18日、またしてもニューヨーク市場の下げにつられた形で日経平均株価が反落。終値は前日比166円72銭(1.96%)安の8,344円1銭と、11月14日に付けたバブル崩壊後の安値(8,303円39銭)に迫った。また、TOPIX(東証株価指数)は815.74と、11月19日以来のバブル崩壊後の最安値を更新してしまった。
  この日の要因は、外人投資家の姿勢がクリスマスを控え低調なことが響き、それに伴って国内の機関投資家や個人投資家が買い見送りとなったことが相場を押し下げた。また、前の日のニューヨーク株式の下落は、半導体大手のマイクロン・テクノロジーが時間外取引で急落したことが主な要因だ。
  ところで、東京市場の株価下落はいったいどこまで行くのか。このまま株価が下落を続ければ、銀行や生損保などの機関投資家だけではなく個人投資家も「総悲観」となり、市場心理を冷やしていく。市場は年内取引が最終段階になっており、どこまで下がるのかが心配になってくる。
  なぜ、このような株価の低調を招くのだろうか。最大の要因は、政府の経済政策が「財政再建なのか、それともデフレ政策なのか」が明確になっていないためである。かつて、橋本政権のときにも、市場は財政再建の政策に「ノー」を突きつけて、株式市場が下落傾向になった。そのあとの小渕内閣では、積極財政のための経済政策があったので、株価は一時、2万円をつけて反騰する場面もあった。しかし、森政権になると再び株価は下落し、小泉政権では財政再建の姿勢に、「いつ明るくなるか分からない」経済に対する不安が募り、ニューヨークが上げているときに東京市場は下げていた。
  国内経済もようやく上向き始めたときに、今度はニューヨーク市場がアメリカ経済の停滞や会計の不正などで株価が下落し始め、それにつれて日本経済も「腰折れ」となり、株価は下降線を取り始めたのである。今後、東京市場が明るい雰囲気になるためのいくつかの条件を考えてみよう。
  1. アメリカの影響が大きい日本にとって、まずはニューヨーク市場の立ち直りが必要。
  2. 日本経済の再生の基本である銀行の不良債権処理が軌道に乗ること。
  3. 産業再生の実績が上がること(特に中小企業)。
  4. 大企業の中でリストラ回避対策のためのワークシェアリングが進み、雇用を維持すること。
  5. 老後不安の元凶である年金不安が解決すること。
  6. 国債の枠にこだわらない緊急時の景気対策が打てること。
  このような点が明確にならなければ、冷え切った市場のマインドは容易には暖まらないであろう。最安値を更新している東京市場のシグナルは経済活性化への要求であり、衆知を集めて取り組まなければならない。
  ここで政治が誤ると、日本経済はもちろん、世界経済の恐慌にまで発展しかねない。
  ここはまさに正念場である。「陰の極」は相場反転のタイミングであるが、現在のこの「下げ」が、そのタイミングの近さを示す証し(あかし)であるよう願ってやまない。
(経済評論家  石井 勝利)
2002.12.24
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