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外貨預金の金利と手数料の関係
  2002年は、外貨資産による運用が個人の資産運用において注目された1年間といえるのではないであろうか。その理由としては、日本の低金利商品に比べ高金利であることやユーロの誕生などがあげられる。そのような流れを受け、高金利表示の外貨預金の広告を最近よく目にするようになった。そこで今回は、預入期間が非常に短期の高金利外貨預金について考えてみることにする。
  外貨預金の金利は預入金額によって大きく異なるが、1年定期で通常0.2%〜0.5%程度である(2002年12月の平均的水準)。この水準は円預金に比べかなり高いことは事実であるが、一方では、日本の預金と違い手数料や為替リスクなどのデメリットも存在することも事実である。だが、最近の外貨預金の広告では、リターンの部分だけが強調され「個人投資家が思わず誤解してしまうのではないか?」と思わせるものもある。特に非常に期間の短い定期預金(1カ月定期)の金利を年換算した商品などが代表例である。
  例えば、為替レート(TTM)が120円、米ドル預金「1カ月定期 年利18%」(為替手数料片道1円)という商品を仮定し、検証してみよう。年利18%と表記してあれば、一瞬「これはすごい」と目をひくことは間違いない。しかし、外貨預金を行う際、まず注意すべき点は、
(1)
為替手数料はいくらか
(2)
預入期間はどれぐらいか
(3)
預入金額はいくらからか
の3点である。なぜなら上記3点こそが、顧客のリターンに大きな影響を与えるものだからだ。一般的な米ドル定期の場合、為替手数料は往復2円(1ドルにつき円→ドルへ交換時点で1円、ドル→円への交換時に1円の計2円)が発生することになる。よって今回の仮定の場合、手数料率 ※ は2円÷120円で約1.66%程度となる。つまり、為替レートに変動がないと仮定しかつ1年間保有を行った場合は、年利1.66%以上の収益が必要ということになる。
  では、リターンとなる金利はどうであろうか。1カ月定期の年利が18%ということであれば、税引き後は、年利14.4%となる。しかし注意しなければならないのは、あくまでこの表記は、1カ月定期を年利に割り戻した結果の数値であり、1年間に渡り14.4%の金利が約束されるわけではない。もし、1カ月だけで解約した場合の利息は、14.4%を12カ月で割る必要がある。つまり14.4%÷12カ月=1.2%となる訳である。これに対し、手数料は、期間にかかわらず1.66%が必要となる。よって、その差額を求めると1.2%−1.66%=▲0.46%となり、年利18%の1カ月定期でも元本割れとなる可能性がある。当然為替相場は変動するため、この数値だけで損得判断はできないが、表面上の金利をうのみにして投資してしまえば、実際は「こんなはずではなかった!」という結果にもなりかねないのである。特に、1年未満の定期預金を年利換算した商品においては、表示してある金利と受け取る利息にギャップを感じる可能性があるので注意が必要である。
  少々荒っぽい計算になるが、1カ月定期の利息が年換算18%で表示してある場合、1カ月後に解約すれば、手数料率は、1.66%の12倍として19.92%と考えることもできるのである。(このような表記をすれば、誰も購入しなくなるのでこのような表記はしないであろうが・・・)。
  同様に、1ドル120円と仮定した場合、往復2円の米ドル預金で手数料率を年換算に再計算したものが以下の表である。
保有期間 1カ月 3カ月 6カ月 1年 2年 3年 5年
手数料率 19.92% 6.64% 3.32% 1.66% 0.83% 0.55% 0.332%
  結論としては、賢く外貨預金を行うのであれば金利だけで判断せず、金利と為替手数料率はセットで考えること。さらに言えば、金利は預入期間によって変動し、一方で年換算の手数料率は、保有期間が長くなれば確実に逓減していくということを知っておくことである。よって、このことを押さえておけば、1カ月定期の高金利外貨預金に飛びつきそうな顧客へも注意点も含め、適格なアドバイスができるはずである。
 ※ 利息に対する為替手数料は計算を簡易にするため考慮していない。
2003.01.07
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