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失業者対策は「雇用促進」から「創業促進」へ
●失業者の創業を支援する制度が新設される
  厚生労働省は2月から、失業者対策として新たな支援制度をスタートさせる予定だ。その1つである「地域雇用受け皿事業特別奨励金」は、企業やNPO法人(特定非営利団体)が失業者を雇用する際に一定額を支援するというものだ。具体的には、介護・子育て・人材派遣など需要が大きい9分野のサービス業について、創業から1年以内に失業者を3人以上雇い入れると奨励金が受けられる。もう1つの柱である「自立就業支援助成金」(仮称)は、失業者が新たに会社を設立する場合の支援金で、45歳以上の失業者3人が共同出資した場合などに最大500万円の助成金が支給される。
  いずれの制度も、既存の企業ではなく新規創業について支給されるという点で共通している。これまでにも新規創業時や中高年の共同創業に対する助成金(時限措置)はあったが、今回は特定のサービス業の創業に限定していることや、「失業者」の創業について助成金が出る点に特徴がある。
●企業が採用してくれないのなら失業者自身が仕事を作り出すしかない
  厚生労働省の助成金制度は、これまでは既存企業に対して雇用促進をはかるものが中心だった。50以上ある助成金のうち、創業支援に関する助成金はわずかにすぎない。しかし、ここ数年、全国的に開業率よりも廃業率が上回るという厳しい状況が続く中で、既存企業に新たな雇用を生み出す力はなくなりつつある。
  また現在、完全失業者の3人に1人が1年以上にわたって失業し、失業保険が切れても再就職を果たせない人が急増している。この現状では、既存企業が採用してくれるのを手をこまねいて待つよりも、失業者自身が起業してあらたな働き口を見つけたほうが早いのではと、厚労省が考えたとしても無理はない。
●株式会社の資本金が免除される5年間の時限措置もスタート
  また、今春からは失業者の創業を後押しする制度がもう一つスタートする。昨年の臨時国会で成立した中小企業挑戦支援法により、新たに起業する者に対して商法の最低資本金規制が5年間免除する特例が設けられたのだ。通常、株式会社の最低資本金は1,000万円だが、経済産業大臣から確認を受ければこの金額がゼロになる。これは失業者に限った制度ではないが、ただでさえ経済的に厳しい失業者にとって、起業のハードルを大幅に下げることは間違いないだろう。失業者にとっても、会社に雇ってもらうために努力するという受け身の姿勢ではなく、自ら起業して仕事を作り出すという価値の転換が必要な時期に来ているのかもしれない。
(マネーライター 本田 桂子)
2003.01.21
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