>  今週のトピックス >  No.553
2003年は海外の経済政策にも注目
  世界株式市場の時価総額は、2002年の1年間で約20%も減少した。この減少額を日本円に換算すれば約550兆円にもなり、2001年度の日本のGDP(1年間に日本国内で生み出された付加価値の総額)497兆4,272億円を大きく上回る。世界株式市場の時価総額の約半分を占める米国株も当然例外ではなく、ニューヨークダウ平均の下落率は約20%、ハイテク関連銘柄が多いナスダックはさらに減少幅が大きく約30%を記録している。このように世界の株式市場が低迷する環境下において、2003年の世界経済の動向は、今後の世界経済を方向づける重要な年となるであろう。中でも特に米国経済の動向は重要であり、この動向が今年の日本および世界経済に大きな影響を及ぼすことになる。そこで、今回は2003年の米国経済動向を捉える上で大きなポイントとなる米国政府の経済政策について考えてみる。
  まず、「既に実施済みの経済対策」「実施の可能性が高い経済対策」「実施の可能性がある経済対策」の3つに分けてまとめると、以下のようになる。
【既に実施済みの経済対策】
FFレートを史上最低水準となる1.25%まで引き下げ
(2001年以降12回目となる)

この金利引き下げは、個人の消費意欲を向上させ一定の効果を発揮した。特に住宅ローン金利の引き下げに伴う借り換えを促し、個人の消費活動は活発化した。

【実施の可能性が高い経済対策】
今後10年程度で3,000億ドル程度の大型減税

具体的には、株式の配当課税に対して軽減(米国は、配当所得は総合課税)や相続税の減税、企業の設備投資に対する減税策などが有力視されている。

【実施の可能性がある経済対策】
景気対策のつなぎとして、米国政府がドル安容認を行う

これにより、米国の輸出関連企業(特に製造業)の業績が回復する。また、輸入がドル安により制され、この結果貿易赤字の減少が見込まれる。

  この中で、注目すべきは、やはり米国政府によるドル安容認である。もし、ブッシュ政権が、来年の米国大統領再選を見越し、米国国内製造業の声を反映して、ドル安容認を行うような姿勢に転じれば、当然対ドルにおいて円高がもたらされることになる。これは、現在の日本経済にとって有力な景気回復およびデフレ脱出のシナリオといえる「円安主導の景気回復」の可能性が断たれてしまうからである。ひいては、日本の輸出企業の業績悪化に伴う日経平均のさらなる下落、また史上最高額を記録している個人金融資産の円ベースでの価値減少、機関投資家にとっても円高は外貨建て資産価値の減少などの悪影響をもたらすことになる。つまり、米国の経済対策において、ドル安容認という対策は、大型減税やFFレート引き下げといった対策とまったく異なり、日本にとってあまりにも副作用が大きいものになるのである。
  従来であれば、銀行の窓口担当者や保険の営業担当者にとってこのような話題が、預金金利や予定利率へ影響を及ぼすことがある、いわゆる間接的な影響事項といえるものであった。しかし、1998年の銀行における投信窓販、2002年10月の保険(なかでも変額年金)窓販解禁によって、今後はこのような話題こそが販売活動に直結してくる重要なものとなるであろう。2003年は、このような海外の経済政策についても関心をもって日々の営業活動に励みたいものである。
FF(Federal Funds)レート
  米国のFRS(連邦準備制度)の加盟銀行は、預金残高の一定割合を連邦準備銀行に預け入れることが義務付けられており、この資金が不足している時などに、余剰が出ている銀行より資金を借りる際の金利のこと。
2003.01.21
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