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注意しなければならない景気一致指数下方修正
  デフレ経済からの脱却が小泉総理の発言で2年程度「先送り」されたが、それを裏付けるように景気動向を示す11月の景気動向指数の一致指数は、先に内閣府から発表された速報値の33.3%を下方修正する30.0%となった。
  景気の善しあしを表すこの数字は50%が分かれ目になるが、改めて景気後退が鮮明になったわけである。今回の改定値が悪くなったのは、新たに指数に加わった「製造業の稼働率指数」が3カ月前に比べて悪化したことによる。
  この稼働率が更に悪くなったのは、製造業が現在の売れ行き不振から過剰設備の状況にあり、借金で備えた設備が稼働しなくなり、資金繰りが悪くなったことによる。販売不振に悩む中小企業などの嘆き声が聞こえるようだ。
  ところで、今回の指数の中身を見ると、一致指数の改定値を構成する10の指標のうち、一部の雇用・消費関連指標を除く7指標が悪化している。今回30.0%と、一致指数が景気判断の分かれ目である50%を大きく下回ったわけであるが、これは実に10カ月ぶりの事で、景気動向は再び「谷間」に落ちてきたことになる。
  景気判断の指数は「一致指数」のほかに、5〜6カ月先の景気動向を示す「先行指数」がある。それが今回の発表では70.0%で50%を上回っている。しかし、速報値の72.2%からは下方修正となった。それでも50%を上回ったのは2カ月ぶりの事だ。
  問題は、先行指標がそのまま「一致指数」につながるかどうかである。期待ばかりが膨らんで、実際の景気は悪化しているという事態になったのでは、デフレ傾向はますます悪化するであろう。
  政府の「インフレ・ターゲット」の導入論に対して、日銀の速見総裁は「関心がない」と突っぱねたが、実体経済の悪化を金融政策でインフレにして取り繕おうとする「付け焼き刃」の経済政策に対する反発ではないだろうか。
  いま求められているのは、金融の不良債権処理の加速に加えて、悪化したマインドを暖めるための積極的な財政の出動ではないだろうか。
  確かに国債残高は巨額に上るが、冷え切った経済をこのまま放置すると経済の悪化を招き、不良債権が増える可能性が大きい。
  景気動向指数は、景気が上向きか下向きかを示す統計指数で、景気の「山」や「谷」といった転換点を認定する際の判断材料になる。
  今回の発表数値に対しては、大きな危機感を持たなければならない。
(経済評論家 石井 勝利)
2003.01.28
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