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誕生1周年のREITを検証する
  平成13年9月に、日本初の上場不動産投信(以下REIT。J-REITとも呼ばれる)が登場して、1年が経過した。日本ではまだなじみの薄いREITについて検証してみたい。
●小口で不動産投資が可能
  REITとは、たくさんの投資家から資金を集めて不動産や不動産を裏付けとする信託受益権などに分散投資をし、そこから生じる賃料や売却益を投資口数に応じて分配する商品である。
  現在上場されているREITは、すでに稼動している不動産を組み込んでおり、地価や賃料の急激な上昇は考えにくい。従ってキャピタルゲイン(売買差益)はさほど期待できないが、現在のような低金利下では相対的に高い分配金が期待できる。長期保有を前提に、安定的なインカムゲイン(分配金)を狙うのに適した商品といえる。
  また、今後の経済情勢などを踏まえた投資判断や不動産管理業務といった役割を、専門家が分担して行ってくれるのも、REITの大きな魅力だ。ただし市場で取引されるため、売却価格が購入価格を下回る可能性も十分考慮しておかなくてはならない。
それ以外にも、REITならではの留意点がいくつかあるので、以下に挙げておく。
●REITの留意点
  • 組入れ不動産の瑕疵(かし)や賃料支払い不履行、賃貸契約の解約といった、投資対象が不動産であるために起こりうるリスク。
  • 景気後退や金利変動といった外部環境によるリスク。
  • 地震、火災による費用負担の増加リスク。
  • REIT組成関係者の運営能力は信頼に値するか、運営行為に利益相反が発生しないか。
  • 投資法人による社債発行や借り入れ、投資口増資などの資金調達が円滑に進むか。それが不動産購入とのタイミングとマッチするか。
  今後は企業が財務リストラのために本社ビルを売却するとか、不動産事業から撤退するために保有物件を売却するといった案件が多くなってくると思われる。それらの情報をいち早くつかみ、適切な価格で購入できるかどうかも、REITが成長を続けていくための大切な要素だ。
  REITではその運営能力が大きく問われる。実物不動産と違ってREITは取引所で売買できるため、流動性は格段に高くなる。しかし、中身が不動産であることに変わりはない。不動産投資特有のリスクをいかに軽減し、収益を挙げていくかが、REITを通して専門家の力を利用するだいご味だろう。
●配当課税軽減で資金流入の可能性も
  譲渡益課税や配当課税などの税制は、株式とほぼ同じと考えてよい。REITの分配金も株式の配当同様、少額配当の申告不要制度が適用になる。つまり、1銘柄1回当たりの分配金が5万円以下(計算期間が1年以上だと10万円以下)の少額配当の場合、配当金支払い時に20%の税金が源泉徴収され、確定申告義務は免除される。このため、REITの平均投資口数は3口台にとどまっている。
  政府は配当課税を20%の源泉徴収に1本化する方向で検討中であるが、これが固まれば、富裕層の資金がREIT市場に流れこむ可能性が高い。誕生間もないREIT市場を健全に育てていくためには、資金流入を見込んだだけの質の低いREITをやたらにつくることは避けなくてはならない。そのためにも買い手サイドが厳しくチェックする目を養う必要があるだろう。
(MMIライフ&マネープランニング 内藤 眞弓)
2003.01.28
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