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株式投資信託が公社債投信を上回る日
  投資信託には、運用対象に株式を組み入れることが可能か不可能かによって、
(1)株式投資信託
(2)MMFおよび公社債投資信託*(以下、公社債投資信託)
に区分される。
  投資信託協会から公表された2002年12月末の投資信託純資産残高は、36兆160億円となり、前年末比9兆2,647億円の減少となった。1999年ごろから、残高が60兆円を突破する勢いの状況から考えれば、大幅な残高減少となっている。
  しかしこの数値だけで、投資信託は下火になったと判断するのは危険である。
  たとえば、(1)および(2)の2002年度の設定・解約状況をまとめると次のようになっている。
2002年中の投資信託の状況 (単位:億円)
  (1)株式投資信託 (2)公社債投資信託
純資産総額 163,728(△14,674) 196,431(▲107,320)
設定額 85,908(△ 4,072) 324,967(▲370,215)
解約 44,652(▲ 5,628) 427,918(▲300,187)
資金流入・流出 38,948 ▲107,175
(  )内の数値は前年対比の増減額 △増加 ▲減少
  2002年の投資信託の現状をまとめれば、株式投資信託の純資産総額の増加は1兆4,674億円であるが、運用環境悪化による価値減少分を資金流入の額が上回り、その結果、純資産総額は増加となった。一方で、公社債投資信託は、純資産総額を大幅に減少させており、特にその要因は資金流出によるものである。
  また、注目すべきもう一つの点は、銀行等における窓販の全体販売(株式投資信託+公社債投資信託)における占率の拡大である。1999年当時の、銀行等窓販の占率はわずか5.4%程度であったが、2002年12月末時点での銀行等窓販占率は、その4倍の21.6%に達している。特に株式投資信託だけに限っての銀行等窓販占率は、さらに全体販売より10ポイントも上回る30.9%にもなっている。これは、世間において銀行における投信販売がかなり浸透している結果の表れといえるだろう。
  平成15年度自民党税制改正大綱においては、株式投資信託の収益分配金の税率は、2004年1月から一定期間、10%(現行20%の源泉分離課税)へ引き下げられる予定である。さらに、株式投資信託における解約・償還に際して発生した差損に対し、株式の譲渡益と損益通算も可能となる予定である。一方で、公社債投資信託などはマル優が段階的に廃止となっている。つまり、「貯蓄」から「投資」へという政府スローガンのもと、税制改正により税制優遇を受ける株式投資信託と増税となる公社債投資信託というように明暗が分かれる結果となった。
  この結果、投資信託の純資産総額の内訳として、株式投資信託の占率が、MMF・公社債投資信託の占率を上回る日はそう遠くないといえる。
厳密には、MMFと公社債投信は区別すべきですが、今回の内容においては区分する必要性がないため、同一とします。
2003.02.11
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