>  今週のトピックス >  No.574
2月月例経済報告で明確になった個人消費の「弱い動き」
  景気の低迷感が一層強まる中で、イラク情勢も経済に暗い陰を落としている。株価の低迷やゼロ金利どころか、マイナス金利という異常事態の我が国の経済状況では、この先も厳しいものがあると予想できる。
  このような中で、竹中平蔵経済財政・金融担当相はこのほど、2月の月例経済報告を関係閣僚会議に提出した。それによると景気は「一部に持ち直しの動きがみられるものの、このところ弱含み」とされ、4カ月ぶりに判断を据え置いた。
  中でも個人消費は、明確に「弱い動き」という表現で下方修正された。消費の減速をはっきりと認めたわけである。
  実体経済を見ると百貨店の売り上げは減速し、やたらと「セール」が目立つ。タクシーの乗車率も下がり、運転手からは「あきらめ」の声も聞こえてくる。
  ニュースでは高級車や宝石などの高額商品が売れていると報じられているが、それはごく一部の「金持ち層」の動きであって、一般消費者は来るべき経済の深刻な状況やリストラ、倒産の危機におびえている。このようなことから、月例経済報告ではこの報告とともに、世界経済の動向や消費者心理の悪化に警戒感を示した。
  ただ、個人消費が低迷する一方で、設備投資の下げ止まりや企業収益の改善などから、持ち直しが続いているとの見方は崩していない。
  しかし、全体としては方向は一時的に下向きと説明している。これは一部には明るい材料があるとは強調しながらも、とても上向きの表現は使えないというジレンマである。景気が停滞感を強めて方向性を失う中で、政府の判断にも弱気な姿勢が見られるが、いかに表現を工夫しても経済が下向きであることには変わりはないので、当たり前といえば、当たり前の表現である。このようなときに、「見通しは明るい」などの表現は実体との乖離を招き、不信感を強めてしまう。
  月例報告の中身をもう少し見てみると、個人消費の判断は「おおむね横ばい」としながらも、「足元弱い動きがみられる」としたのは、苦しい表現ではあるが、経済の悪化を認めたことになるわけである。
  総務庁統計局による家計調査では、昨年12月の消費支出は前月比で4.2%の大幅減となり、百貨店販売額の前年比の減少幅が拡大している経過がその背景の一つにある。この要因をマクロで見ると、所得の減少が悪影響を及ぼしていることが大きいといえる。さらには、「先行き不透明感」から生じた「消費者心理の悪化」も、消費の減速につながっているとみていいであろう。
【消費支出の推移(全国・全世帯)】
消費支出の推移(全国・全世帯)
総務庁統計局 「家計調査報告」
(経済評論家 石井 勝利)
2003.02.25
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