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受付開始から1年、個人型確定拠出年金の動向
  自助努力による老後資金準備の選択肢として、平成13年10月に法律が施行され、スタートを切った確定拠出年金は、企業が従業員のために掛け金を負担する「企業型年金」と、一定の加入資格を持った個人が掛け金を負担する「個人型年金」の2つの制度から成り立っている。
  このうち、企業型年金については、既存の確定給付型の退職給付制度(退職一時金、企業年金)の積立不足にあえぐ企業に受け入れられ、順調な普及を見せている(企業型年金規約承認数233社またはグループ、加入者数約27.4万人。平成14年11月末現在)。
  一方、「個人型年金」については、年間で5,000〜6,000円程度の手数料がかかる点などがネックとなり、低調な滑り出しとの評価が一般的となっているが、平成14年1月の個人型年金受け付け開始から1年経過した現在の状況、および課題点や今後の展望を見ていきたい。
  まず、平成14年12月までの累計加入者数は、1万人弱となっており、月別にみると徐々に増加傾向は見られるものの、直近の12月でも月間1,500名程度の加入にとどまっている。
  とはいえ、将来的な個人型年金の増加要因として、企業型年金の普及に伴い、転職・退職による企業型から個人型への年金資産の移換が徐々に増えつつある点は注目される。
  課題点としては、50歳以上の加入者が最も多く、本来、公的年金制度に不安を抱えているはずの若年層の加入が低迷していることが挙げられる。この理由としては、老後までの期間の長短による意識の差もさることながら、所得水準の低い若年層にとっては、個人型年金の最大のメリットともいえる所得控除による節税効果が、所得水準の高い中高年層よりも小さいためとも考えられる。
  また、退職・転職等による企業型年金から個人型年金への移換後に、個人型年金へ加入しない人の割合が85%と極めて高くなっていることも課題点といえる。
  確定拠出年金の売りである「ポータビリティ」が機能するためには、企業型年金の増加に伴って、今後大量に発生することが予想される企業型年金加入者の転職・退職後の受け皿として、個人型年金が魅力を感じられる制度になる必要がある。そのためには、手数料の問題など制度の抜本的な見直しを図っていくことが求められるだろう。
【月別加入者数と累計加入者数の推移(人)】
月別加入数と累計加入者数の推移
各月の加入数の累計であり、資格喪失者を控除していない。
出典:厚生労働省主催の第4回確定拠出年金連絡会議資料より抜粋
2003.03.04
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