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取得価額30万円未満までの資産は即時償却が可能に
  平成15年度の税制改正で、中小企業の少額減価償却資産の損金算入制度の拡充が図られた。取得価額の要件が大幅に引き上げられ、取得価額が30万円未満までの資産については、その全額が一度に損金算入できるようになった。また、取得価格が20万円未満の場合、3年一括償却を選択することができる。
  取得価額20万円未満の少額減価償却資産の場合、(1)即時償却、(2)3年一括償却、(3)通常の減価償却の三つのうちから、最も有利な経理処理方法を選択することができるようになった。
(1)即時償却
  機械や備品などの減価償却資産は、帳簿上、それぞれ定められた法定耐用年数に応じて毎年償却していく。しかし現行では、取得価額が10万円未満の少額減価償却資産については、事業の用に供した事業年度において一度に償却(損金算入)することができる。「即時償却」とも言われ、平成15年度の改正で、この即時償却の取得価額要件が10万円未満から30万円未満へと大幅に引き上げられた。これまでと段違いの引き上げ幅である。
【参考】損金算入限度額の改正経緯(経済産業省・中小企業庁資料より)
○ 昭和22年度1,000円
○ 昭和26年度10,000円
○ 昭和39年度30,000円
○ 昭和45年度50,000円
○ 昭和49年度100,000円
○ 昭和63年度200,000円
○ 平成10年度100,000円
○ 平成15年度300,000円
  平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に取得した30万円未満の資産は、種類を問わず、取得価額の全額が一度に損金算入可能となった。なお、取得価額30万円未満の判定は、機械なら1台ごと、器具や備品なら一個、一組ごとに判定される。
  また、この改正は、あくまで資本金が1億円以下の中小法人が対象であり、資本金が1億円を超える大法人については、即時償却ができるのはこれまでどおり10万円未満の資産となる。
  (2)3年一括償却
  一括償却とは、10万円以上20万円未満の資産を事業年度ごとに一括して、その全額を3年間で均等に償却していく方法であり、法定償却率を考慮しつつ、通常の減価償却と比較して有利な方を選択できる。
  今回の改正点を踏まえて整理すると、次の表のようになる。
減価償却資産の取得価額 (1)即時償却 (2)3年一括償却 (3)通常の減価償却
10万円未満
10万円以上20万円未満
20万円以上30万円未満 不可
【設 例】
取得価額15万円の機械(定率法、法定耐用年数4年、期首に取得)を5台購入した場合の比較
事業年度 (1)即時償却 (2)3年一括償却 (3)通常の減価償却
1年目 75万円 25万円 32.9万円
2年目 - 25万円 18.5万円
3年目 - 25万円 10.4万円
4年目 - - 5.8万円
  減価償却費の計上は、損金算入による税効果に影響を及ぼす。また、企業の経営状況によって有利・不利の選択が分かれてくるであろう。そして、この取得価額30万円未満の少額減価償却資産の即時償却の特例は、今のところ平成18年3月31日までの時限立法であり、「多年度税収中立」の方針からすれば、その後は間違いなく取得価額要件が引き下げられるはずだ。だとすれば減税の恩恵を受けられるうちに受けておくべきであろう。
  この改正が中小企業の投資を促し、OA 機器等の取得・更新による事業の効率化、活力向上に加え、総需要の喚起に波及することを期待したい。
2003.03.11
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