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「ヒトゲノム」の解析で、医療はテイラーメイドの時代へ
  最近の科学の発展は目覚しいものがある。特に、遺伝子の解析が進んでおり、「生命の謎とき」もあと少しのところにきているようだ。クローン人間の誕生というニュースも、ことの真偽は別にしてあり得ないことではない。
  また、遺伝子の解析、すなわち「ヒトゲノム1」の研究が進み、医療は予防医療になり、テイラーメイドの時代といわれている。
  テイラーメイド医療2とは、遺伝子レベルでの個人の体質の違いを把握した上で行う予防や治療を指す。がん検診などにおいて、肉親にがんになった人がいないかと聞かれるが、これもその一つといえるだろうか。また、痴ほうについても、「アルツハイマー型痴ほうを生じさせやすい遺伝子」が存在するということだ。遺伝子の解析により、高齢者の痴ほう防止が期待される。
  政府のバイオテクノロジー(BT)戦略会議では、「研究開発の圧倒的充実」「産業化プロセスの抜本的強化」「国民理解の徹底的浸透」の三つの戦略を推進することにより、「生きる」「食べる」「暮らす」の向上を図るという、バイオテクノロジー戦略大綱を発表している。
【バイオテクノロジー戦略大綱の実現する社会】
1.健康と長寿の達成(よりよく生きる)
2.食料安全性、機能性の向上(よりよく食べる)
3.持続可能な快適社会の実現(よりよく暮らす)
4.BT分野において、世界に貢献する日本
5.我が国産業の国際競争力の向上と新産業の創出
  テイラーメイド医療は「1.健康と長寿の達成」に該当し、個人の体質を遺伝子レベルで突き止め、疾病の予防・治療に生かすことが行動計画として挙げられている。
  このように「ヒトゲノム」の研究が進むと、難病の予防や早期発見が容易になり、がんなどは助かる病気になると思われる。現在の医療では早期発見・早期治療が第一目標なので、自分の医学的データを熟知し、気安く相談ができ、いざという時には専門医を紹介してくれる「かかりつけの医者(ホームドクター)」を持つことがテイラーメイド医療といえる。
  生命保険の営業職員は、日々、さまざまな情報を提供し、生命保険に関してアドバイスをし、いざという時はプロとして相談に乗る「リスクに関するホームドクター」である。将来、生命保険にも、遺伝子検査によってリスクをはかる時代がやってくるかもしれない。その時代における生命保険業は、現在とまったく異なるものになっているのだろうか。
1ゲノム
ゲノムとは親から子へ伝えられる遺伝情報のすべてを示す。ヒトの場合、23本の染色体上に載っている。どの細胞も、例外を除いて1セットのゲノムを有しており、ゲノムが引き継がれることで、細胞の活動が維持されることから、生命の設計図と呼ばれる。
2テイラーメイド医療
個人個人の遺伝情報の違いをSNPs解析により見出し、その情報を基に、薬剤応答性や副作用のリスクを回避し、がんなど疾患の特性などを考慮し、個人ごとにもっとも適した処理を行うことができる医療。(SNPsとは、一塩基多型のことで、遺伝子の塩基配列が一カ所だけ異なる状態およびその部位を指す。同じ種であっても個体ごとでゲノムの塩基配列が異なり、ヒトでは700塩基に1個の頻度で見つかる)
参考:首相官邸ホームページ「バイオテクノロジー戦略大綱」より
2003.04.08
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