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10年間で「主な収入が年金等の世帯」が88%増
●年金に頼る世帯への課税強化を検討
  4月18日、政府税制調査会は、税制の将来像を示す中間答申(3年ごと策定)の6月取りまとめに向け、年金課税を強化する方針を確認した。
  高齢者が年金を受け取る際の税優遇を縮小し、膨らみ続ける社会保障負担を幅広い世代で分かち合うことがねらいのようだ。
【政府税制調査会の年金課税強化の主な内容】
1.  公的年金等控除の縮小
現行は、65歳以上の場合、最低でも公的年金等控除額140万円まで課税対象外 → 縮小
2.  遺族年金への課税
現行は、非課税 → 課税
3.  老年者控除の縮小
現行は、65歳以上、年間所得1,000万円以下なら老年者控除50万円を課税対象から差し引く → 縮小
  総務省統計局の「平成12年国勢調査抽出速報集計結果」によると、高齢者のみの世帯の増加に伴い、「主な収入が恩給・年金の世帯」は、平成2年の482万世帯から平成12年には907万世帯になり、88.2%の大幅の伸びを記録している。
  都道府県別にみると、同期間の増加率は、34.2%から154.9%の幅で、すべての都道府県で増加している。このうち増加率が100%を超えた(10年前の2倍以上に増加した)のは、埼玉県の154.9%を最高に、全国の14都府県で、大都市、およびその周辺の都府県に集中している。
  また、10年前の一般世帯数に占める「主な収入が恩給・年金の世帯」の割合との関係を見ると、もともと割合が低かった都道府県ほど増加率が高くなっている。
●自助努力により老後生活が左右される時代へ
  政府税調の試算では、公的年金等控除と老年者控除を全廃すると仮定したとき、1兆1,000億円の増税になるとみられている。
  若い世代には年金などの保険料負担が重く、世代間負担を公平にするためにも年金課税を強化し、冒頭の政府税調の方針のように、広く高齢者に負担を求める必要があるかもしれない。また、平成16年の次期年金改革を議論している社会保障審議会では、5月下旬には国庫負担割合の引き上げもにらみながら、年金給付額の引き下げや年金開始の繰り上げなども検討されるようである。
  世界に比類ない高度経済成長に基づく公的年金制度を頼りにした豊かな老後生活は、夢、まぼろしの世界となり、現実には厳しい老後が待ち受けている。そのため、今後は変額年金などの個人年金や確定拠出年金などによる自助努力の時代が本格的に幕開けになるといえるだろう。
参考:総務省統計局「国勢調査トピックス」
2003.04.29
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