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証券税制改正は投資信託の銀行窓販に追い風となるか
●新証券税制が金融業界に与える影響とは
  平成15年度の税制改正により、証券市場の活性化の目的で証券税制に関して大幅な改正が行われたのはご存じの通りである。今回の新証券税制をまとめると、次の三つに区分できる。
1. 上場株式等の譲渡課税
  譲渡益は申告分離課税に一本化され、税率は原則20%(平成19年末までは10%)
  取得価額1,000万円までの売却益非課税(平成19年末まで)
  売却損の3年間繰越控除(恒久)
2. 上場株式等の配当課税
  源泉徴収による申告不要制度は、配当金額にかかわらず20%に(平成20年3月31日までは10%)
3. 公募株式投資信託課税(平成16年1月から)
  株式投資信託の収益の分配金課税が平成20年3月31日までは10%
  株式投資信託の償還・中途解約による損失を、株式等との売却益と損益通算可能
  1、2は証券会社に関連する税制といえるが、3は証券会社だけではなく、投資信託窓販を行っている銀行・生命保険会社・損害保険会社にも大きく関係してくる改正といえる。そこで今回は、中でも3の公募株式投資信託に関する税制改正を中心に考えてみよう。
●分配金課税減税で投資信託販売が加速するか
  まず、「収益分配金の税率の引き下げ」について、従来は預貯金の利息と同じ20%の源泉分離課税であった株式投資信託の収益分配金は、預貯金の半分の10%の課税に引き下げられることになった。つまり、銀行の窓口で「預貯金の税率は20%で、しかもマル優は平成17年で廃止になります。一方で、株式投資信託の収益分配金は、現在税率が10%になっており、非常に有利です。」というような説明がなされることになる。
  これによって、従来以上に株式投資信託の販売促進が予想される。特に、最近高齢者の間でブームとなっている毎月分配型の投資信託は、分配金に課税される税率が10%に減税されることで一層の販売が加速されることになるであろう。
●投資信託の譲渡損を株式譲渡益と通算
  また、今回の投資信託に関する税制改正のもう一つの特徴は、損失が発生した際、「株式の譲渡益との損益通算」を認めている点である。
  例えば、2003年4月28日の日経平均の終値は約7,607円となっており、窓販解禁の1998年12月末の終値13,842円と比較すると、約45%の下落となっている。これは、銀行が窓販解禁当初に販売した投資信託の中には大きな含み損を抱えている顧客が数多く発生していることを意味している。このような含み損を抱えた投資家にとっては、上場株式や未上場株式の譲渡益と投資信託の譲渡損を損益通算できる改正は朗報といえる。
  銀行等窓販のシェアは、今回税制優遇の対象となる公募株式投資信託に限れば、年々増加の一途をたどっており、2003年3月末において34%を突破している。(投資信託協会調べ)これは、公社債投信も含めた窓販シェア23.4%を大きく上回っており、その点からも今回の改正が、銀行などの株式投資信託窓販にさらに拍車をかけることは容易に予想できる。
  投資信託の窓販解禁から5年目を迎えた2003年、証券税制改正という追い風を受け、株式投信の銀行等窓販のシェアが40%台へと拡大していくかに注目したい。
2003.05.06
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