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アメリカで活躍する日本の女性生保エージェント
〜トップ・エージェントインタビュー〜
●アメリカ社会で自分がどれだけ通用するか
【アメリカンドリームを実現させたMrs.Yuka Nakahara-Goven】   現在、アメリカで仕事をしている日本人の生保エージェントの募集基盤は、アメリカ在住の日本人や日系人に限定されている場合がほとんどである。
  だが、アメリカに帰化したとはいえ日本人でありながら、アメリカ人の中小経営者や資産家を相手に、ハイレベルな業績を挙げている女性がいる。アメリカンドリームを自らの手でつかみ取ったのがMrs.Yuka Nakahara-Goven(以下中原さん)だ。
  テキサス州ダラス在住の中原さんは、アメリカ最大手のニューヨークライフ社専属のトップエージェントだ。
  中原さんは日本の大学を卒業後、単身渡米し、アメリカの大学院で金融経済学を専攻した。在学中にアメリカ人の現夫と結婚し国籍を変更したが、就職活動は容易ではなかったという。
  今まで学んできた専門知識がどれだけアメリカ社会で通用するのか、中原さんには「わざわざ日本人を相手にすることはない」という思いが強かった。数社と交渉する中でニューヨークライフだけが「自分の人生設計をどう考えているか」という他社と違ったアプローチを要求され、約6カ月間のインタビューを経た上で1985年、同社にエージェントとして入社した。
  アメリカで、一社専属の生保セールスマンが高い社会的地位を得てドア・ツー・ドアの活動をしていたのは、もう50年以上も前の話。今では専属制エージェントを擁しているのは、ニューヨークライフをはじめプルデンシャル、ノースウェスタン・ミューチュアルなど数社に過ぎない。
  大部分が独立系エージェントやブローカーで占めているが、ニューヨークライフは今後も専属制を維持していくとしている。約8,900名いる同社のエージェントだが、女性は9%に過ぎず、全米でも女性エージェントは1割を切る。日本以上に熾烈な競争社会のアメリカで、一流になるきっかけをつかむのは相当の努力を要することが分かるだろう。
●個性を発揮することが成功への第一歩
   2年間の実地訓練を含むトレーニングを終えてから、中原さんがつかんだきっかけは、中小企業オーナーへのアポ取りであった。毎朝7時か夕方6時に電話をすると、直接電話口に出るオーナーが多いと中原さんは言う。
  その際、(1)女性であること、(2)外国人の名前であることが大いに武器になった。当時ダラスでは、金融関係の専門家である女性は少なく、珍しいこともあって必ずアポが取れた。
  会えれば資産内容や問題点など顧客の状況をすべて把握した上で、ベストな提案をする。資産運用がメインで、投資や税金上のアドバイスを行い、かつ相続対策として定期保険の必要性を提案する。公認会計士や弁護士などのバックアップ体制が整うと、顧客から信頼され契約もできるようになった。信頼が得られればオーナーからの紹介も自然に出てくる。こうして徐々に中原さんの名は、優秀なエージェントとしてダラスの中小企業オーナー・資産家の間で知られるようになっていった。
  現在、中原さんはニューヨークライフダラス支社内に専用の事務所を持ち、スタッフを雇って顧客管理・開拓に明け暮れている。一時は1,000名を超える顧客数だったが、うち650名は新人に任せ、残りの350名中、トップ50名とは自ら常にコンタクトを取っている。
  常に前向きで行動的な彼女だが、プレッシャーに押しつぶされそうになったこともあるという。そんな時こそ、自分を見失うことなく自分の個性を発揮するように努めた。「日本の社会でもそれはできること」、と中原さんは最後にそう締めくくった。
(取材:荒明 孝昌)
2003.05.13
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