>  今週のトピックス >  No.619
市場インデックス連動型運用(パッシブ運用)の増加が意味するもの
●パッシブ運用とは
  パッシブ運用とは、株式・債券などの有価証券投資における運用スタイルの一つであり、例えば、国内株式の場合、TOPIX(東証株価指数)など、所定の市場インデックスをベンチマーク(=基準)として、これに連動する収益の獲得を目指すものである。これに対し、ベンチマークを上回る収益の獲得を目指す運用スタイルは、アクティブ運用と呼ばれている。
●パッシブ運用“ブーム”の背景
  近年、株式などの証券投資における運用スタイルとして、パッシブ運用の台頭が顕著になりつつある。
  例えば、投資信託の場合、日経平均株価やTOPIXといった市場インデックスに連動するタイプの「インデックス・ファンド」が以前から存在していたが、証券会社の営業政策もあって、アクティブ運用型のいわゆる「巨艦ファンド」に隠れた地味な存在であった。
  しかし、証券会社と営業政策を異にする銀行など新たな投信販売チャネルの拡大や、2001年7月の株価指数連動型上場投信(ETF)の登場を背景に、運用コストの安さやパフォーマンスの分かりやすさといったパッシブ運用のメリットが、個人投資家の間にも浸透しつつあるといえる。さらには、2001年10月にスタートした確定拠出年金においても、運営管理機関から加入者に提示される運用商品ラインアップとして、投信では市場インデックス連動のパッシブ運用タイプが主流になっている。
  一方、主として生保・信託銀行などの機関投資家を通じて行われる年金資産をはじめとする大口投資家の運用スタイルも、公的年金を筆頭に近年パッシブ運用のウエートが高まっているとされる。
  個人投資家、機関投資家を問わず、パッシブ運用が脚光を浴びている背景として、近年のいわゆるITバブル崩壊において、アクティブ運用のパフォーマンスがパッシブ運用に比べて著しく悪化した事実が挙げられるだろう。
●パッシブ運用の副作用を指摘する声も
  このようなパッシブ運用“ブーム”に対して、マーケットが本来持っている選別機能が失われるとの指摘もある。すなわち、パッシブ運用が主流になると、投資家の選別によって、有望な企業の成長を促す一方で、衰退企業を退出させるという、市場が本来持つ「新陳代謝」の機能が失われる可能性が考えられる。この点については、2003年3月の日銀「マーケットレビュー」においても、パッシブ運用の広がりによって市場の効率性が失われることや、各銘柄の相場が一方向に動く「全面高・全面安現象」が起こりやすくなること、また市場インデックスの銘柄入れ替え時にテクニカルな価格変動が発生することなどが指摘されている。
2003.05.20
前のページにもどる
ページトップへ