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見直しを迫られる厚生年金基金の資産構成比
●運用差損が年金給付を上回る
  厚生年金基金は、厚生年金の給付の一部を民間企業が代行し、さらに上乗せして給付を行う制度である。厚生年金基金連合会の発表によれば、平成15年5月1日現在、基金数1,650、加入者1,050万1,000人(厚生年金保険の被保険者の約3分の1に相当)、受給権者386万4,000人、平均年金月額5万1,000円、純資産51.7兆円(平成13年度決算結果)となっている。
  厚生年金基金制度のイメージ図は以下の通りで、従業員にとっては厚生年金基金への加入により充実した年金制度となる一方で、企業にとっては運用責任が発生することが分かる。
【厚生年金基金のしくみ】

  また、平成13年度末の収支状況は右表の通りとなっており、運用差損が1,172億円発生している。また、2の支出のうち、年金等支払いによる給付費は、991億円となっている。

  つまり平成13年度は、厚生年金基金の運用差損が、年金等の給付金を上回ったというわけである。

【厚生年金基金連合会の収支状況(平成13年度)】

1
収 入
9,592億円
2
支 出
1,274億円
3
運用収益
▲1,172億円
4
運用費用
57億円
●国内株式の構成比率が高く、代行返上が加速する
  では、年金資産という安定的かつ長期的な運用が求められる資産でありながら、なぜこのように大きな差損が発生してしまったのだろうか。その理由は、現在の厚生年金基金の資産構成に起因しているといっても過言ではない。具体的な資産構成、および運用成績は次の通りである。
【厚生年金基金連合会の資産構成と運用実績(平成13年度)】
資産内訳
資産構成
運用実績
国内債券
40.0%
0.94%
国内株式
32.9%
▲15.13%
外国債券
7.5%
8.34%
外国株式
17.0%
5.25%
生保一般勘定
0.6%
その他
2.0%
  つまり、現在の厚生年金基金の資産構成では、32.9%が国内株式で運用されており、昨今の国内株式市場の低迷が厚生年金基金財政を急速に悪化させているのである。同じ年金資産である公的年金の基本ポートフォリオの場合、国内株式の平均比率が12%となっており、両者を比較しても厚生年金基金の国内株式偏重が明らかである。
  昨今の資産運用おいては、過去の実績を元に計算した期待収益率は無用の長物と化しており、その期待収益率を元にした資産構成での運用成果は現実と大きくかけ離れた実績になっている。その観点からも、今後の厚生年金基金の資産構成比率は、大きな見直しを必要とされるであろう。仮に見直しをせずこの構成比を放置すれば、代行返上の流れは今後ますます加速することが予測され、最終的には厚生年金基金という存在そのものが問われることにもなりかねない。
  申告納税制度は、すべての納税者が租税の意義を理解し、適正な申告と納税を行うことによって、自主的に納税義務が遂行されることを基盤にしている。このシステムの導入により、税務署に赴くことなく申告・納税等が行えることや税務計算の自動化が図られることなど、納税者の利便性の向上につながることが期待されている。
参考:厚生年金基金連合会ホームページ
2003.05.20
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