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短時間労働者への厚生年金適用拡大案などが提示された
  厚生労働省は4月22日、パートタイマーなどへの厚生年金の適用拡大の見直し案を社会保障審議会年金部会に提示した。現在は、「1日または1週間の所定労働時間、1カ月の所定労働日数が正社員のおおむね4分の3以上」が加入要件とされているが、今回、短時間労働者の新適用基準を、「週の労働時間が20時間以上または年収65万円以上」とする見直し案が提出された。
● 短時間雇用者が1,200万人を超え、雇用者の4分の1を占める
  総務庁統計局の「労働力調査」によると、短時間雇用者(週労働時間が35時間未満の者)は、年々増加し、平成14年において1,200万人を超え雇用者全体の4分の1を占めている。
  また短時間労働者(1週間の労働時間が正社員より短い者)のうち、厚生年金の被保険者である者は、約3割だけである。雇用者全体に占める厚生年金被保険者の割合は、平成2年から連続して減少し続けているが、その理由として厚生年金が適用されない形で働いている人が年々増加しているからと考えられる。
● 第3号被保険者にも報酬比例部分の年金支給案
  また今回、厚生労働省は、各方面から見直しの声が上がっていた国民年金の第3号被保険者制度について、見直しに向けた四つの案を提示した。
  四つの案とは、(1)夫婦間の年金権分割案、(2)負担調整案、(3)給付調整案、(4)第3号被保険者縮小案である。
  「夫婦間の年金分割案」は、第2号被保険者(会社員など)が保険料を納めた際に、第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)の分を折半負担していたとみなして、その時点で夫婦ともに基礎年金に加えて、報酬比例部分の厚生年金についても半分ずつの権利が発生するというものである。「負担調整案」および「給付調整案」は、いずれも個人化を徹底するという観点で作られた案であり、「第3号被保険者縮小案」は、短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大に伴う被扶養配偶者認定基準の見直しにより、その対象者を縮小していこうとするものである。
● 新適用基準が採用されると、厚生年金加入者が400万人増
  厚生年金の新適用基準については、保険の給付と保険料の負担の関係で、さまざまな問題が残る。例えば、第1号被保険者である者が短時間就労して厚生年金の適用を受けることになった場合、標準報酬の下限を引き下げると、従前の国民年金保険料を下回るにもかかわらず、基礎年金が満額もらえて、さらに報酬比例部分の厚生年金ももらえるという矛盾が発生するケースもある。
  今回の新適用基準が採用されれば、厚生年金の被保険者は、新たに約400万人増加する見込みである。国民年金の第3号被保険者制度の見直し案と密接に関連しているため、慎重に検討をしていかなければならず、最終的にどのような案でまとまるか、今後注目すべきところである。
参考:第17回社会保障審議会年金部会資料
(社会保険労務士 庄司英尚)
2003.05.27
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