>  今週のトピックス >  No.631
2003年3月末の銀行決算が発表された
● 大手銀行全社で赤字決算
  5月26日、大手銀行グループが2003年3月期決算を発表した。決算内容としては、大手銀行グループ全社が2期連続の赤字決算となった。その理由は、不良債権処理に伴う損失に加え、株安による損失発生の影響が大きい。この影響で、りそなホールディングスは、2兆円にも上る公的資金を申請し、実質国有化されることになった。
  今年の銀行決算におけるポイントは、次の点が考えられる。
  1. みずほフィナンシャルグループをはじめ、7グループで合計4兆6,199億円の当期赤字となった。
  2. 本業のもうけを示す業務純益は、7グループ合計で4兆2,061億円となり、1年前に比べ増加した。
  3. 7グループの3月末の不良債権残高は20兆8,367億円で減少に転じた。
  4. 4大金融グループが2003年3月に相次いで行った総額約2兆円の増資は、今回の赤字決算によりその効果がなくなり、三菱東京フィナンシャルグループを除き、自己資本比率が低下した。
● 業務純益の低下がマイナス要因になる
  この決算内容を、株式市場はどのように評価したのだろうか。決算発表日の株価は、以下のとおりだ。
 
みずほFG
三井住友FG
三菱東京FG
UFJ
三井トラスト
住友信託
りそなHD
26日終値
768
2,030
4,560
1,100
234
337
66
前日比
△35
△80
▼30
△60
△9
△10
▼2
  実際の株価の動きから、大手銀行の今期の決算内容に対する市場の評価を推測すると、発表内容が大方の予想と同じであったため、一定の評価を得ているといえるだろう。その表れとして、割安感のあった一部の銀行株銘柄については投資家からの買い戻しが行われており、その結果、銀行株が上昇に転じている。
  今回の決算を見ると、引き続き業務純益で不良債権処理を行っているフェーズとなっている。その一方で、自己資本比率を引き上げるために、強引な融資引き上げ等の処理を行った結果、企業は、
(1)銀行借入金の返済を加速
(2)企業社債発行等による資金調達
などのように、銀行からの借り入れ(間接金融)から、市場からの資金調達(直接金融)に切り替える方向に進んでいるようだ。
  これが進展すると、銀行本来業務の地盤が沈下し、業務純益に悪い影響を与えることが予想される。業務純益が低下することになれば、今後の不良債権処理のシナリオが土台から崩れ去る可能性があるといえるだろう。事実、2004年3月期予想では、今後不良債権処理の最終段階を迎える予定である大手銀行の多くが業務純益の減少を予想している。
  今後、日本経済回復のかぎは、官(政府・日銀)と民(銀行を含む金融界業界)が一体となった政策と経営努力にあるといえるだろう。
2003.06.09
前のページにもどる
ページトップへ