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フリーターの増加に警鐘
〜「平成15年度国民生活白書」より〜
● デフレ下の生活を映した白書
  竹中経済財政政策担当大臣は、5月30日の閣議に、「デフレと生活−若年フリーターの現在(いま)」と題する平成15年度国民生活白書を提出した。
  今年度の白書は3章から成り、まず第1章では、「デフレ下の国民生活」と題し、デフレが国民生活に与える影響を考察している。
  今回の白書の目玉といえるのは、続く第2章、第3章であり、第2章では、「デフレ下で厳しさを増す若年雇用」と題し、若年雇用の悪化と要因、その問題点と対策を検討している。また、第3章では、「デフレ下で変わる若年の家庭生活」と題し、若年の雇用の悪化が、消費、結婚、出産といった若年の家庭生活にどのような影響を及ぼしているかを分析している。
● 若年フリーターの見えない問題にスポットを当てる
  従来の雇用情勢をめぐる政府の対策は、どちらかというと中高年層の雇用情勢の悪化に焦点が当てられてきた。しかし今回の白書が、若年層の雇用情勢の悪化を真正面からクローズアップした点に、大きな意義があるといえる。
  これまでは「フリーター」という語感から、ともすると組織に束縛されることを嫌う若者が、自ら好んで「フリーター」になっているかのようにとらえられがちな面もあった。この点について白書では、正社員を希望しながらフリーターになった人が7割を超えるとの調査結果を引用し、明確に否定している点も注目される。
  さらに白書では、若年フリーターの増加が、今後、若年の職業能力の向上を妨げ、経済成長の制約になったり、犯罪の増加などの社会不安を引き起こしたり、未婚化、晩婚化、少子化を深刻化させる可能性を指摘している。
  一般的に、住宅ローンや子どもの教育費を抱える中高年層の場合、雇用情勢の悪化は目に見える「痛み」につながる。その一方で、比較的豊かな親と同居する未婚者などは、正規雇用に従事できなくても、当面「痛み」を伴うことはない。このような影に隠れて見えにくい問題を掘り下げ、国民にその深刻さを訴えた点も評価できる。
  今回の白書は、示唆に富む多くの指摘がなされてはいるものの、肝心の対策という点では、職業紹介や職業訓練の推進など従来の政策の域にとどまり、踏み込み不足の感も否めない。白書では、若年フリーターが増加する一方で、正規雇用の若年層が長時間労働を強いられがちな点を指摘しており、若年層内部でのワークシェアリングなど、産業界を巻き込んだ大胆な対策が待たれる。
【もともとフリーターになりたかった人は少ない】
もともとフリーターになりたかった人は少ない
出典:内閣府「平成15年度国民生活白書」
2003.06.09
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