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超低金利時代におけるボーナス運用
  6〜7月は、多くの企業で夏のボーナスが支給される時期である。近年のボーナスに関するキーワードは、次の三つである。
1.  
長引く不況の影響による支給額の減少。
2.  
ボーナス自体の位置付けが毎月の給与のような安定賃金の一部というより、業績連動の賃金というものに変化。(業績いかんでは支給がされないという可能性があるということ)
3.  
社会保険料の総報酬制度が導入されたことによる実質の受取額減少の可能性。
  このようにサラリーマンを取り巻くボーナスの環境自体が大きく変化する中、さらに追い打ちをかけているのが、支給されたボーナスを運用する資産運用の環境の悪化である。80年代のように金利が高い状況であれば、ボーナスの一部を預金しておけば自然に利息がついて増えていくのが常識であった。しかし、昨今のような超低金利では、預金の利息はほとんど期待できないといっても過言ではない。しかも長期金利(新規発行10年国債の年平均利回りのこと)は、ここ1年でさらに大きく低下しており、6月に入ってその水準がついに0.4%台へ突入した。
  長期金利が0.4%台に突入するということは、10年満期の金融商品の年平均利回りが、0.4%台になる可能性もあるということである。10年満期でさえ、0.4%台になりつつあるということは、当然10年以下の期間の定期預金はさらに低くなるということである。ちなみに平成15年5月現在の一般的な預貯金金利の水準は次のとおりである。
【税引き前の預貯金金利水準】
3カ月定期
6カ月定期
1年定期
3年定期
5年定期
0.01〜0.02%程度
0.02〜0.03%程度
0.03%程度
0.07%程度
0.1%程度
注:上記の一覧表は、一般的銀行預金の金利であり、大口定期やネット銀行およびキャンペーンなどの金利はこれらより、若干上乗せされる。
  また、上記金利で仮に10万円を運用した場合の年間受取利息は、次のようになる。
【10万円を運用した場合の税引き後利息】
3カ月定期※1
6カ月定期※2
1年定期
3年定期※3
5年定期※3
2円
8円
24円
56円
80円
※1:金利は0.01%で計算
※2:金利は0.02%で計算
※3:一年超の定期の利息は1年目の年間受取利息
  上記から明らかなように、この金利水準下でボーナスを運用する場合、預金から受け取れる利息は限界がある。一方、預金の金利が低いからといって、リスク商品でどんどん運用すればよいというものでもない。つまり、このような環境の中においてボーナス運用は、次のような手順をしっかり踏んで運用を行うことが重要である。
1. 
まずボーナスを三つの資金に分ける。
● 資金1:
すでに支払いが決定している資金(ボーナス払いのローン等)
● 資金2:
数年後に支払い予定のある資金(子どもの入学金、住宅購入の頭金等)
● 資金3:
自分たちの将来のために積み立てる資金
2. 
資金1は、1〜3カ月以内に支払われる可能性が高く、加えて支払額も確定しているため普通預金等を活用。
3. 
資金2のうち、教育費は少子化の影響もあり上昇傾向が続いているため、教育ローンも活用できる金融商品(郵便局の教育積立貯金など)や、ある程度長期で運用できる子ども保険の活用を検討する。
4. 
資金3については、現在の預貯金の金利に期待するのは難しいので、リスク商品を積極的に活用する。
  特に資金3を取り巻く環境は、「証券税制の改正による税率引き下げ」「外為法改正による外貨建て金融商品の多様化」「金融ビッグバンによる投信や保険の銀行窓販解禁など取り扱い金融機関の増加」など80年代と比較すれば、当時よりも現在の方が飛躍的に向上している。例えば、国内金利よりも金利が高い外貨で運用したいと考えれば、「外貨預金」「外貨建てMMF」「海外債券投資の投資信託」「海外債券そのもの」を金融機関の窓口で、しかも小額から購入できる。また、将来の年金が不安なので個人年金に加入したいと考えれば、「定額年金」に加え、最近は「変額年金」も選択できるようになった。さらに、株式運用を行いたいと考えれば、「株式」だけでなく「株式で運用する投資信託」も活用できる。
  デフレ経済の出口が見えない現在、今後急速な金利水準の回復は当分見込めないであろう。このような状況の中で今顧客から求められるのは、資金1、2、3に応じた金融商品を提案できるアドバイザーであることは間違いない。不透明な時代に不透明なボーナス。しかし、発想を変えれば顧客からの信頼を勝ち得る絶好のチャンスともいえる。
2003.06.16
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