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製造業への派遣を解禁
〜改正労働者派遣法などが成立〜
  改正労働者派遣法と改正職業安定法が、6月6日に成立した。主な改正点をそれぞれまとめると、次のようになる。
〔労働者派遣法〕
(1)
一般業務の派遣期間の上限を、現行の1年から3年に延長。派遣期間が1年を超える場合、派遣先の事業主が労働組合などの意見を必ず聞いた上で、「臨時的・一時的」と判断されることを条件とする
(2)
現在3年となっている専門性の高い26業務(ソフトウエア開発、通訳、秘書業務等)の期間制限を撤廃
(3)
物の製造業務への派遣を解禁(施行後3年間は期間の上限を1年とする)
(4)
派遣先が、派遣期間を超えて派遣労働者を引き続き使用する場合には、希望する者に対し、直接雇用契約の申し込みを義務付ける
(5)
派遣期間の終了後、正社員として雇われることが予定される紹介予定派遣は、派遣決定前であっても面接、履歴書送付などが可能
〔職業安定法〕
無料職業紹介を地方自治体に解禁
● 改正労働者派遣法の問題点
  この改正に対して連合は、さまざまな問題があり、労働者保護に欠けているとして、不安定雇用の労働者が増加することを危ぐしている。具体的には、
(1)
過半数労働組合などから意見聴取を確実に実施できるか
(2)
派遣と請負の厳正な区分が徹底されるのか
(3)
雇用申し込みを義務化しても直接雇用化の実効性が確保されるのか
(4)
製造業への派遣解禁については、安全衛生や労働災害にかかわる責任体制や、労働者に対する安全教育、中期的な熟練技能育成が必要
などの問題がある。
  連合は今後、労働政策審議会において、政省令をはじめとする指針の検討作業の中で実行策を詰め、また、派遣労働者を受け入れる際の労使協議の導入の徹底など、労働組合としての取り組みを進めていく予定であるとしている。
● 製造業への派遣解禁で、派遣労働者が増加する
  厚生労働省発表の資料によれば、平成13年度中の派遣労働者は175万人で、前年比26.1%増となっており、今後も増える可能性が高い。
  派遣で働く人が増える中で、今までは派遣期間の上限が1年だったため、仕事に慣れたころに契約期限切れになってしまうという企業の声が多かった。しかし今回の改正で、この点について問題が解消されることになった。
  今後、製造業への派遣が解禁されるのに伴い、企業は、より安い労働力を求めて正社員の代替として、また、業務の繁忙期に合わせて、効率よく派遣労働者を積極的に採用していくことになるだろう。国は監督指導を厳しくし、法令遵守を徹底させると同時に、外部の意見や現場の声を大事にしながら諸問題を解決していき、企業と派遣労働者の双方にとって、良い制度を構築していく必要があるだろう。
(社会保険労務士  庄司英尚)
参考:厚生労働省ホームページより「改正職業安定法および改正労働者派遣法法律案要綱」
2003.06.23
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