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患者一人の医療費、3カ月間で1億円近く
〜注射代だけで月3,965万円〜
● 循環器系疾患が高額レセプトの6割を占める
  健康保険組合連合会がまとめた平成14年度の「高額レセプト上位の概要」によると、1カ月の医療費が1,000万円以上を超すケースは81件で、前年より25件減ったが、2,000万円以上は6件と過去最高となった。81件の主な病名をみると、循環器系疾患によるものが49件、血友病9件、悪性新生物9件となっており、循環器系疾患によるものが6割を占めている。
  最高額は平成14年5月分として申請のあった「血友病」で入院した男性で4,007万3,310円(うち注射代が3,965万3,030円)である。この患者は、同年4月分の月額医療費が3,137万150円、6月分が2,395万4,400円と、3カ月合計で9,500万円超にもなる。これまで、1カ月のレセプトの過去最高額は平成13年度の2,256万1,810円で、これを大幅に上回る記録的な金額となった。
  公的医療保険は医療費の3割が自己負担だが、1カ月当たりの自己負担は高額療養費制度によって限度額が定められている。また、血友病や人工透析が必要な慢性腎不全などの特定疾病については、自己負担金が1万円を超えた場合、その超えた額が支給される。
  今年3月末現在の健保連1,674組合の8割近く(77.8%)は赤字だが(平成14 年度決算資料)、その主な要因は、年々増加している老人医療費の拠出金負担にあるとされている。しかし、特定疾病以外の超高額医療費が発生すれば、健康保険組合は一気に赤字から解散へとつながりかねない。
  このため連合会の救済措置として、全組合が拠出する調整保険料を財源として、一般疾病は100万円、特定疾病は40万円を超えた部分を支援する制度がある。平成14年度の高額医療給付に関する交付金財源は603億円であったが、実際の交付額は634億円で予定を上回り繰越金でしのいでいるのが現状である。このまま増え続ければこの制度維持も困難になりそうだ。
【1,000万円以上高額レセプト件数の推移】
1,000万円以上高額レセプト件数の推移
健康保険組合連合会資料より
【高額レセプト上位10位の病名と医療費】
順位
病名(患者年齢)
月額医療費
主な内訳
1
血友病(17歳)
40,073,310円
注射代 39,653,030円
2
31,370,150円
31,073,060円
3
23,954,400円
23,557,880円
4
ファロー四徴症(0歳)
22,915,870円
手術代 19,783,790円
5
後天性血友病(70歳)
21,703,580円
注射代 20,590,080円
6
拡張型心筋症(47歳)
20,397,830円
手術代 16,767,760円
7
血友病(2歳)
19,434,460円
注射代 18,541,150円
8
急性大動脈解離(35歳)
17,114,000円
手術代 11,730,070円
9
心筋梗塞(23歳)
16,122,520円
11,476,910円
10
拡張型心筋症(59歳)
15,891,520円
11,505,730円
健康保険組合連合会資料より
※注
レセプトとは、診察・治療にかかった医療費から患者が支払った金額(一部負担金)を差し引いた「診療報酬請求書」のこと。したがって、上記のケースでも実際にかかった医療費はもっと高くなる。
2003.06.30
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