>  今週のトピックス >  No.645
妊娠や出産を理由にした解雇等の個別紛争が急増
● 女性の退職勧奨や解雇に関する個別紛争が8割を占める
  厚生労働省の「男女雇用機会均等法施行状況」調査によると、平成14年度に都道府県労働局の雇用均等室に寄せられた相談約1万8,000件のうち、女性労働者からの相談が7割を占めた。内容はセクシャルハラスメントが42%、母性健康管理に関するものが18%で、特に、セクシャルハラスメントと定年・退職・解雇に関する相談が増加した。
  相談から一歩進んで、雇用均等室が労働者と企業間の個別紛争の解決のために指導や援助を行ったケースは、前年度より15件増加して122件となった。そのうち8割(98件)が退職勧奨や解雇に関するもので、さらにその8割(86件)が結婚・妊娠・出産など女性特有の事情を理由とするケースだった。
  個別紛争解決の援助事例をみると、妊娠した女性労働者が産前産後休業・育児休業の取得を申し出た翌日に解雇通告を受けるなど、あからさまな均等法違反のケースや、子どものいる女性だけが遠方への転勤を命じられたり総合職から排除されるといった、女性労働者への差別的処遇が目立った。
● 均等法の実効性を高める施策が必要
  昭和60年に男女雇用機会均等法が施行されてからもうすぐ20年がたつ。女性の社会進出が進み、従来の結婚・即退社という「寿退社」の慣行が下火になったものの、妊娠・出産をきっかけに女性が職場を追われる構図は変わらない。それどころか、不況で余裕のなくなった企業(特に中小企業)が、使いづらい既婚女性をどんどん排除する動きが顕著になっている。
  政府は少子高齢化を食い止めるためにさまざまな施策を講じているが、事業主の意識がこのようなレベルのままでは実現は難しいだろう。政府には均等法に対する事業主の意識改革や違反時の罰則の強化など、実効性を高めるための施策が早急に求められる。
● 非正規社員にも安心して妊娠・出産ができる社会に
  厚生労働省の「第12回出生動向基本調査」によると、結婚5年未満で働きながら子育てをする妻は2割以下で、出産前に就業を中止するケースが多い。正社員が育児休業をとるケースが増えているものの、勤務先による格差が大きく、規模の小さい企業ほど育児休暇を取りづらいようだ。妻が正社員として働き続けるには、妻の母親の育児援助が不可欠というデータもある。
  このままでは、大企業に勤務し母親が育児を手伝ってくれるという恵まれた環境でなければ、女性が働きながら子どもを産み、育てるのは難しいということになってしまう。急増する非正規社員が安心して妊娠・出産ができる社会になるためには相当のハードルがありそうだ。
(社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー  本田桂子)
2003.06.30
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