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景気回復へ薄日!?
〜2期ぶりに改善を示した6月日銀短観〜
● 回復傾向がうかがえる企業の景況感
  7月1日、日本銀行は6月の企業短期経済観測調査(日銀短観)を発表した。これによると、景気動向を最も敏感に反映し、市場関係者の注目度が大きい業況判断DI(大企業・製造業)は▲5ポイント(前回比+5)と2期ぶりに改善した。その他の主要な項目でも、2003年度の経常利益予想や設備投資計画が前回調査から上方修正され、企業の景況感の回復がうかがわれる結果となった。こうした背景としては、イラク戦争の終結や、最近の株価の回復、円高傾向の一服感などが指摘されている。
  このところ回復基調にあった株式市場では、日銀短観の結果を好感して、日経平均株価、東証株価指数(TOPIX)とも、この日年初来最高値を更新した。
● 家計部門も含めた景気"本格"回復の行方
  3カ月先の予測について業況判断DI(大企業・製造業)が▲5と横ばいになるなど、依然先行き不透明感は否めないものの、企業の景況感に一応の改善傾向がうかがえる背景として、ここ数年来のリストラ進展が挙げられるだろう。しかし、企業のリストラは、一方では雇用情勢の悪化を通じ、少なくとも短期的には家計部門の景況感を冷え込ませる方向に作用する。従って、企業部門の回復が、個人消費や住宅投資など家計部門へいかにうまく波及していくかが今後の焦点となろう。
  この点、1990年代におよそ10年に及ぶ息の長い景気拡大を遂げた米国では、当初政府による規制緩和や企業のリストラを主因に企業業績の回復がみられる一方、雇用環境の悪化から家計部門では冷え込みが続く、"jobless recovery"(ジョブレス・リカバリー=雇用なき景気回復)と呼ばれる現象がみられた。米国では、やがて雇用情勢も改善し、その後力強い景気拡大を遂げるに至ったのは周知の通りである。
  日本の場合も、米国のように当初の"jobless recovery"がやがて景気の本格回復に繋がっていくとの楽観的なシナリオを描く向きもある反面、最近の「構造改革」路線の後退から、米国の経験は日本には該当しないとの悲観的な見方もあり、今後の行方が注目される。
*業況判断DI:業況が「良い」「さほど良くない」「悪い」の三つの選択肢のうち、「良い」と回答した企業の割合(%)から「悪い」と回答した企業の割合(%)を差し引いたもの。業種別、企業規模別に集計され、中でも「大企業・製造業」の注目度が高い。
【業況判断DI】
2003/3月
2003/6月
3→6月
変化幅
2003/9月
まで
(予測)
6→9月
変化幅
大企業
製造業
(−8)
-10
-5
+5
-5
0
非製造業
(-13)
-14
-13
+1
-12
+1
中堅企業
製造業
(−20)
-18
-16
+2
-14
+1
非製造業
(−28)
-28
-28
0
-28
0
中小企業
製造業
(−31)
-29
-28
+1
-28
0
非製造業
(-42)
-36
-35
+1
-37
-2
(  )内は3月調査時予測
2003.07.07
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