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長期金利上昇が住宅ローンに影響を及ぼす
● 7月に入り、長期金利が上昇
  預金やローンなどの金利に大きく影響を与えるものに、「長期金利」がある。「長期金利」は、新規発行の10年国債の利回りで、特に住宅ローンの金利に影響を及ぼす。また、「長期金利」は、銀行や保険会社などの機関投資家などが将来の金利水準を勘案しながら決定していくもので、日々刻々と変化している。
  その「長期金利」が、最近、急速に上昇しており、その動向に注目が集まっている。1998年3月からの長期金利の推移は以下のようになっている。
【長期金利の推移(1998年3月〜2003年7月)】
長期金利の推移(1998年3月〜2003年7月)
  上記グラフからも分かるように、1998年12月の長期金利は2%であったが、2003年6月には0.4%という異常な水準にまで低下してしまった。その後、6月中旬以降は上昇に転じており、7月には1%台に回復した。
  この背景には、10年国債に運用資金を集中させていた機関投資家などが、昨今の日経平均株価の上昇に伴い、債券市場から株式市場へ運用資金をシフトさせたということがある。
● 住宅ローンの支払利息増で、住宅購入に関する相談が増える
  長期金利の上昇は、住宅ローンの金利に大きな影響を及ぼすために、住宅ローン金利の動向に注目が集まる。現に住宅金融公庫は、貸出金利を0.4%程度引き上げ、当初10年間の金利を2.4%程度とする予定だ。当然、銀行などの住宅ローン金利も同様の引き上げが行われる可能性が高い。
  もし住宅ローン金利の引き上げが行われれば、住宅ローンの支払利息が増加することになり、その結果、個人の家計負担増という悪影響を及ぼすであろう。当然、すでに住宅ローンを組んでいる人も、変動金利が上昇する可能性がある。
  そのため、住宅ローンに関して、「これからは長期の固定金利で組んだ方がよいのか」「今、住宅を購入した方がよいのか」などの相談が今後一層増えることが考えられる。
  確かに、景気回復によって今後一層の金利上昇が見込まれるのであれば、現在の金利で長期固定の住宅ローンを組むことは、魅力的といえるであろう。
  一方でここ1カ月の長期金利上昇は、あくまでも昨年の9月の水準へ戻しただけであり、冷静に考えれば、長期金利が1%台というのは十分に低金利ともいえる。行き過ぎた長期金利の低下の修正が行われただけであるならば、あわてて住宅ローンを組むことは本末転倒の行動になりかねないため注意が必要である。
  「これからは長期の固定金利で組んだ方がよいのか」「今、住宅を購入した方がよいのか」という質問に対するアドバイスのポイントは、この金利上昇が、景気回復に伴う本格的な金利上昇の始まりなのか、それとも単なる行き過ぎた金利低下の修正なのかを見極めることである。
  本格的な景気回復と考えるのであれば、「なるべく早く、長期の固定金利で住宅ローンを組んだ方が有利」といえるだろうし、単なる修正と考えるのであれば、「この金利上昇だけをとらえて急いで住宅を購入したり、長期の固定金利でローンを組むことは見合わせた方がよい」といえるだろう。
  ただ、今回の長期金利の上昇が、本格的な景気回復の表れと判断するには、若干材料が乏しい感はある。どちらにせよ、今後の長期金利の動向に注目が集まることは間違いないだろう。
2003.07.14
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