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期限切れが迫る住宅ローン控除が来年度税制改正の焦点に
  政府は7月16日、住宅ローン控除を継続する方針を固めた。平成16年1月1日より控除額を大幅に縮小し、平成17年1月1日から廃止する予定だったが、平成16年度の税制改正に向けて具体案の検討を始めた。住宅ローン控除を継続した上で、段階的に縮小する案を中心に、景気に悪影響を及ぼすのではないかという懸念から延長を求める国土交通省と、税収不足で期間延長に対して慎重な姿勢の財務省の両省のせめぎ合いが激しくなりそうだ。
● 住宅ローン控除とは
  正式には住宅借入金等特別控除といい、日本国内で借入金等により住居用住宅を取得した場合に、その借入金に一定割合を乗じた金額を、税額控除として納税額からそのまま控除できる制度である。
  住宅ローン控除の適用期間や金額は、次のようになっている。
【住宅ローン控除のしくみ】
居住を開始した年月 平成11年1月1日〜
平成13年6月30日
平成13年7月1日〜
平成15年12月31日
平成16年1月1日〜
同年12月31日
控除期間 15年間 10年間 6年間
対象となる年末借入金残高 5,000万円 5,000万円 3,000万円
控除率
1〜6年目
7〜11年目
12〜15年目  
1.0%
0.75%
0.5%
全期間1.0% 2,000万円以下の部分
1.0%
2,000万円超
3,000万円以下の部分
0.5%
各年の最大控除額
1〜6年目
7〜11年目
12〜15年目  
50万円
37.5万円
25万円
50万円 25万円
全期間合計の最大控除額 587.5万円 500万円 150万円
● 分譲住宅は住宅ローン控除の影響が顕著
  国土交通省より平成15年6月30日に発表された平成14年度「住宅市場動向調査結果」から、住宅ローン控除の影響を見てみよう。
【図1  居住用住宅購入資金等に占める資金調達構成比(首都圏)】
図1  居住用住宅購入資金等に占める資金調達構成比(首都圏)
  このように分譲住宅は、注文住宅や中古住宅に比べ、1戸当たりの費用が高いため必要資金が多く、借入依存度が高いことがうかがえる。
【図2  住宅ローンの年間返済額と負担率】
図2  住宅ローンの年間返済額と負担率
  住宅ローンの返済負担率でみると分譲住宅の負担率が高い。前出の「居住用住宅購入資金等に占める資金調達構成比」と合わせて勘案すると、首都圏で住宅購入資金が最も多い分譲住宅は、住宅ローン控除の恩恵が高いと考えられる。
  また、平成13年度調査と比べて、住宅購入資金が減少して、返済額が減少しているものの、返済負担率が増加しているのは、所得環境の厳しさが起因していると考えられる。
【図3  住宅取得時の税制等の行政施策に影響を受けた度合い】
図3  住宅取得時の税制等の行政施策に影響を受けた度合い
  図3から、住宅ローン控除の影響を受ける注文住宅、分譲住宅が、5〜6割以上となっている。分譲住宅においては中古住宅よりも影響が大きく、影響が顕著といえるだろう。
  現行では、住宅ローン控除の「対象となる年末借入金残高5,000万円」や「全期間最大控除額500万円」という特別控除が、今年12月31日までで、来年1月1日から12月31日は、それぞれ「対象となる年末借入金残高3,000万円」「全期間最大控除額150万円」に変わる。
  そのため、今年中の住宅取得が増えることが予想されており、住宅ローン控除の延長は、今年から来年以降の景気回復に影響することは否めない。
  人生最大の買い物であるマイホームを取得しようとする勤労者の意欲が、減退しないような住宅ローン控除の継続延長の内容が望まれる。
2003.07.22
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