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住宅ローンに関するアドバイスのポイントは?
● 新型の住宅ローンが発売に
  今年10月に、住宅金融公庫から新型の住宅ローンが発売される予定である。
  この新型ローンは、住宅金融公庫が投資家から資金を債券発行によって調達し、その調達した資金を金融機関が活用する仕組みである。この仕組みにより、銀行や保険会社が20年以上35年までの超長期の固定金利住宅ローンを提供できるようになる。そのため、今後、この新型ローンの取扱金融機関が増加することが予想され、住宅ローンに関する相談もいっそう増加することが予想される。
● 固定金利か変動金利か
  では、お客様にとって本当に有効な住宅ローンのアドバイスはどういったものだろうか。
  その答えは、2002年度の住宅ローンの返済期間延長や毎月返済額の減額措置を受けた人が77%増という住宅金融公庫の発表にある。住宅金融公庫の貸出金利は、2.0%と最低金利であり、住宅ローン減税も継続されている状況であるにもかかわらず大幅増となった背景には、デフレ経済下における企業業績悪化および賃金カット、そして失業者数の増加などがあることはいうまでもない。
  しかし、このような環境悪化がすぐに住宅ローン返済に深刻な影響を及ぼすということは、住宅ローンを組む際に、
(1) 固定金利と変動金利のどちらにするのか
(2) 金利が低い今が住宅購入のチャンスなのではないか
という2点だけに関心を寄せ、「自分にとって、この住宅ローンの金額は相応の金額なのか」ということを見落としているからではないだろうか。
  確かに、住宅ローンを組むときに、「固定金利」と「変動金利」でどちらが有利なのかということは多くの人が頭を悩ませることである。しかし、どちらが有利ということに対する答えは、少々乱暴な言い方をすれば、数年後、もしかしたら住宅ローンを完済したときにしか分からないことだ。
  なぜなら、金利景気のバロメーターといわれるように、日本経済が回復するかどうかで金利は上下する。また、その日本経済の回復は、さまざまな要素が影響するため、個人がいくら悩んで考えても影響力を与えることはできず、かつ不確定だからである。
  つまり、「金利変動を考えて固定金利にするか変動金利にするか」を悩むことは、さながら「今後の日本経済回復をするかどうかを悩んで株を買うか買わないかを悩む」光景に似ているといえよう。
● もしものときの対応法を検討せよ
  一方で、「自分にとって、この住宅ローンの金額は相応の金額なのか」ということは、前述の悩みとは大きく異なる。なぜなら、自分が組もうとする住宅ローンの金額が自分の収入にふさわしいかどうかは、自分が最も分かることであり、かつ自分が決定する権利を持っているからである。
  確かに将来の予測が不透明である中ではあるが、そのことも十分踏まえた上で、ローン金額を決定することは、不可能ではないはずである。
  しかし、現実にローンを組んだ多くの人は、「金利」を悩むことに時間をさき、「ローン金額・返済額」については、あまり時間を割いてはいない。そしてその結果が、返済期間延長や減額措置を受けた人が増加するという結果になって現れているのであろう。
  「バブル期の高金利時代と比べ、超低金利時代は、住宅ローンを組むチャンスですよ」というアドバイスは確かに正しいのかもしれない。しかし、別の見方をすれば「バブル期の株価と比べ、昨今の株安は株購入のチャンスです」というアドバイスと同レベルともいえるのではないだろうか。今最も必要とされているアドバイスは、今検討中の住宅ローンが自分にとって適正額かどうか、収入ダウンなどが起きた場合の対応法をどうするかなどを、顧客と一緒になって考えることなのではないだろうか。
2003.07.28
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