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65歳までの雇用保障提言へ
● 年金の支給開始年齢の引き上げが要因の一つ
  厚生労働省の「今後の高齢者雇用対策に関する研究会」は、年金の支給開始年齢の引き上げに合わせて65歳まで働ける制度の整備を求めた報告書をまとめた。秋以降、労働政策審議会で議論し、来年の通常国会で、高年齢者雇用安定法改正案を提出する。
  厚生年金の支給開始年齢は、2001年度から定額部分の支払いを引き上げている。最終的に2025年度末には報酬比例部分を含め、支給開始年齢の65歳への引き上げが完了することになっている。
  今は、まさにその支給開始年齢の引き上げ途中にあり、急激な収入減を予防する何らかの解決方法を導き出さなければならないのは明白だ。このような背景もあり、前述の65歳まで働ける制度の整備を求める報告書をまとめることとなった。
● 65歳までの雇用の確保が不十分
  厚生労働省が発表した「平成15年雇用管理調査の概況」によると、一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度、再雇用制度のどちらかまたは両方がある企業割合は、67.4%(前年71.0%)となっている。
  定年到達者のうち再雇用制度の適用する範囲については、「会社が特に必要と認めたものに限る」が56.4%と一番多く、原則として希望者全員とする企業は、23.6%となっている。定年後に再雇用制度や勤務延長制度がある企業は、約7割あるが、実際にその制度の適用を受けている労働者の数は少ない。実際のところ、対象者を限定した勤務延長制度、再雇用制度がある企業において、定年到達者のうち制度が適用される者の割合は、「30%未満」とする割合が最も多い。
  以上のデータから分析すると定年後に何らかの形で継続雇用してもらえる人は、かなり少ないといえる。
● 60歳定年制を採用している企業がほとんど
  厚生労働省は、各企業が定年を段階的に引き上げるか、それが難しい場合でも希望者全員を再雇用するなどして65歳までの雇用を確保すべきであるとしている。
  現在、高年齢者雇用安定法では、定年を定める場合には、最低60歳としている。定年後、再雇用制度などで65歳まで継続して雇用を確保する制度の導入については、努力義務に過ぎない。厚生労働省の「雇用管理調査結果の概況」でも、定年を設けている企業の9割が60歳定年制である。65歳までの雇用を保障している企業がまだまだ少ないのが現状である。
● 企業側の強い反発
  企業側は、法律での定年の一律引き上げに反対の姿勢を示している。終身雇用制度が崩壊し、特に賃金の高い50代社員のリストラを推進しなければならない企業にとっては、定年の延長を考える余裕がないというのが実情だろう。
  また、高年齢者重視の雇用対策は、若年層やパートタイマーの雇用機会を奪ってしまう可能性がある。克服しなければならない課題はたくさんあるが、経過措置の期間をとりながら、最終的には65歳定年の義務化を視野に入れて検討していくことが必要になるだろう。
(社会保険労務士  庄司英尚)
参考:厚生労働省「平成15年雇用管理調査結果の概況」
2003.07.28
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