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介護を受ける場所を選ぶことは可能か?
〜厚生労働省「平成14年介護サービス施設・事業所調査結果速報」より〜
●自宅介護を望む高齢者が4割超
  内閣府「高齢者の健康に関する意識調査結果」(平成14年12月調査)によると、全国の65歳以上の人に、将来介護が必要になるのではないかと不安になることがあるかを質問したところ、図1のような回答を得た。これによると、不安が「よくある」「ときどきある」人が4割を超えていることが分かる。
  続けて、仮に介護が必要になったときに、介護を受けたい場所について質問したところ、図2のような回答になった(図1で「よくある」「ときどきある」「あまりない」「まったくない」と答えた人の回答)。
【図1  介護が必要になる不安】
図1  介護が必要になる不安
【図2  介護を受けたい場所】
図2  介護を受けたい場所
図1、2の出典:内閣府「高齢者の健康に関する意識調査結果」
  図2から、「自宅で介護してほしい」人が最も多いことが分かる。
  では、実際に要介護状態になったときに、本人が望む通り、自宅で介護を受けているだろうか。
  厚生労働省調査の「介護サービス施設・事業所調査結果(平成14年速報)」によって、要介護認定者全体が介護を受けている場所についてある程度の推測が可能である。
●介護保険施設在所者には要介護度4以上の人が多い
  図3は、介護保険施設在所者の要介護度別の割合を示している。
  平成14年では、介護老人福祉施設の在所者のうち、要介護度4および5の人の割合は約57%、介護老人保健施設における割合は約42%、介護療養型医療施設は約72%と、要介護度の比較的重い在所者の割合が多いことが分かる。
介護保険施設には、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設があり、介護保険法による都道府県知事の指定あるいは開設認可を受けている。
【図3  在所者の要介護度別構成割合(平成14年)】
図3  在所者の要介護度別構成割合(平成14年)
  図2と図3から考えられることは、要介護状態が進んだ場合、自宅で介護を受けたいという本人の希望に反して、施設で介護を受けざるを得ない人がいるということである。介護者側の負担が重いといったことが理由として挙げられるだろう。
  また、表1は、介護保険施設の定員数(病床数)である。平成14年10月の定員数は前年同期比で約7%増え、病床数の拡充が進んでいることが分かる。
【表1  介護保険施設の定員(病床数)】
各年10月1日現在(単位:千人(床)、%)
平成14年 平成13年 増減率
介護保険施設 724 679 6.6
介護老人福祉施設 331 314 5.4
介護老人保健施設 255 245 4.1
介護療養型医療施設 138 120 15.0
図3、表1の出典:厚生労働省「平成14年介護サービス施設・事業所調査結果速報」
  なお、厚生労働省の発表した要支援および要介護認定者数は、平成15年3月末時点で350万9,800人となっている(「介護給付費実態調査月報平成15年4月審査分」)。平成15年3月末認定者数を平成14年3月末(298万2,700人、「平成13年度介護保険事業状況報告(年報)」)と比べると、約18%増となる。介護保険施設は平成13年と14年の10月1日時点、認定者数は平成14年と15年の3月末時点なので、単純比較はできないが、認定者の増加ペースは介護保険施設の病床数の増加ペースを上回っていると推測できる。
  要介護状態になったとき、在宅介護を望んでいた人が希望通り自宅で十分な介護を受けることができればベストだろう。しかし、介護する人手が足りないなどの理由から、介護保険施設で介護を受けざるをえない人が今よりも多くなる可能性がある。介護保険施設の整備が引き続き重要であるといえるだろう。
2003.08.04
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