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格付けの意味とそのチェックポイント
  先日、大手格付け機関の一つであるムーディーズ・インベスターズ・サービスは、トヨタ自動車およびトヨタグループ数社の格付けを引き上げると発表した。これにより、トヨタ自動車の長期債務格付けは、Aa1からAaaとなり、長期債務格付けにおいて、最高格付けとなった。現在の日本企業において、長期債務格付けで最高位を取得している企業は、唯一トヨタだけであり、その意味で今回の格付け引き上げは日本経済にとって朗報といえる。
  そこで今回は、「格付けの定義」「格付け機関」そして「チェックポイント」について確認する。
●格付けとは
  ムーディーズの場合、「長期債務」「短期債務」「発行体」「長期銀行預金」「保険財務格付け」などの格付けを行っている。例えば、銀行の預金債務に関する信用力を表すものが、「長期銀行預金」格付け、社債発行企業の債務返済信用力を表すものが「発行体」格付け、そして「保険財務格付け」は、保険契約に基づいた債務を遅延なく履行することができる信用力を表したものである。「長期債務」「発行体」「長期銀行預金」「保険財務格付け」格付けの分類は、Aaa〜Cの9段階に大きく分類されている。
●格付け機関
  格付け機関には、さまざまな会社があるが、代表的な会社としては、以下のような会社があり、それぞれ会社ごとに格付けの考え方や得意分野などが異なるため、それぞれの会社のホームページを参照されるといいだろう。
格付け会社名
本社
ホームページアドレス
ムーディーズ・ジャパン
米国
http://www.moodys.co.jp/ssl/
スタンダード&プアーズ
米国
http://www.standardandpoors.co.jp
フィッチ
英国
http://www.fitchratings.co.jp/
格付投資情報センター
日本
http://www.r-i.co.jp/
●チェックポイント
ポイント1:
格付けにはさまざまな種類があるので、その目的に応じた格付けをチェックすること。たとえば、預金を行う銀行を選定する場合には「長期銀行預金」、保険会社の健全性を判断する場合には「保険財務格付け」、企業の社債を購入する場合の格付けであれば「発行体」「長期債務」格付けをチェックするなど。
ポイント2:
格付け機関ごとに格付けの考え方が異なるものがあるので、比較する場合には、同一の格付け機関の格付け同士で比較すること。また一社だけの格付けで比較するのではなく、数社の格付け機関を参考にすること。(特に、日本の格付け機関の格付けは、海外の格付け機関に比べて高い格付けになる傾向があるので、国内のものだけでなく海外の格付け機関の格付けもチェックする)
ポイント3:
格付け機関のホームページには、格付けごとの債務不履行発生率が掲載されている場合があるので、このような発生率はしっかりチェックする。
ポイント4:
格付けは、いろいろな要因で変更される。そのため、定期的にチェックする習慣をつけておくことである。また、格付けが変動した場合には必ずその変動の理由をチェックすること。加えて、他の格付け機関において格付け変更の有無がないかをチェックすることも重要である。ちなみに、前述のトヨタ自動車の場合、今回の格上げの理由は、高い業績ときわめて良好な資本構造を維持していくことや、コスト削減、多様な製品ラインナップなど、さまざまな点が織り込まれた結果と発表されている。
  銀行預金に対する平成17年4月のペイオフ全面解禁や、生命保険会社の予定利率引き下げ問題など、金融機関に対する格付けの重要性が、個人顧客から今後ますます注目を集めることはいうまでもない。その際に、上記で述べた程度の格付けに関する最低限の知識だけはしっかり習得し、顧客からの質問や疑問が寄せられた場合には適切かつ的確に対応できるようにしておきたいものである。
2003.08.11
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