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正社員の6割が成果主義に「賛成だが、不安」
  厚生労働省所管の特殊法人「日本労働研究機構」は8月6日、「企業の人事戦略と労働者の就業意識に関する調査」を発表した。この調査は、企業の人事戦略の実態や雇用に対する考え方を明らかにするとともに、正社員やパートタイマー労働者・派遣労働者などの就業者意識をさぐることを目的としており、調査結果から、会社員の大半が賃金の成果主義に賛成する一方で、不安も感じていることが明らかになった。
●  6割以上の従業員が「昇進に差があることは望ましい」
  従業員を対象とした結果によると、同期社員の正社員の昇進については、「どちらかといえば昇進に差がついた方が良い」が39.5%、「実力の違いにより差がついた方が良い」が21.4%で、6割以上が昇進に差がつくほうが望ましいと回答している。
  一方、企業側を対象とした調査結果では、同期入社の正社員で差がつくのは、現状で「入社5年目位」が29.5%と最も多いが、今後の方針では「入社3年目位」で差をつけるとする企業が31.9%で最多となっている。また、現在は入社直後から差をつけている企業割合は、5.7%に過ぎないが、今後の方針として考えている企業割合が10.7%であることは、注目すべきだろう。
●  成果主義賃金体系に「賛成だが、不安」が正社員の6割
  実現した成果により社員を評価して報酬を決める、いわゆる成果主義的な賃金体系について正社員の考えを聞いたところ「賛成」が27.6%で、「賛成だが、不安」が60.1%と全体の6割を超え最も高く、「反対」は7.1%であった。
  「賛成だが不安」、「反対」と回答した人に理由を聞いたところ(複数回答)、「上司や管理者が正しく評価するかわからない」が79%、次いで「仕事によっては能力が発揮しにくい」が51%、「収入が不安定になる」が37.8%であった。
  同機構は「成果主義導入を積極的に賛成しているのではなく、ベースアップが望めない中で仕方なく認めているサラリーマンも多いのでは」と分析している。
  成果主義を導入したものの、最近見直しをしている企業も多い。成果主義制度を導入しても、実際に運用を始めると複雑すぎて対応できなかったり、評価者が制度をよく理解していないことがある一方で、組織を無視し、個人の成果だけを追求する社員が増えてしまうということが理由のようである。
●  成果主義賃金制度の導入は、慎重な対応が必要
  賃金制度の変更を考えている企業割合は、72.7%とかなり高い割合を占めている。成果主義賃金制度を導入すると人件費もコントロールしやすく、仕組みも合理的でやる気も出るというメリットもあるが、賃金のダウンや降格はモラルの低下につながり、短期的な業績に固執するので長期的な視野が欠落してしまうというデメリットもある。
  正社員の6割が「成果主義に賛成、だが不安」という調査結果を踏まえて、今後、各企業が生き残りをかけてどのような成果主義賃金制度を導入していくのか、大変興味深いところである。
(社会保険労務士  庄司 英尚)
参考資料:日本労働研究機構
2003.08.18
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